36協定の実務その1 – 改正労基法・改正安衛法 –

36協定の実務その1
– 改正労基法・改正安衛法 –

さて3月6日は、36(サブロク)と読める。
連合の幹部から、4月1日の改正法施行前、3月6日をサブロクと語呂を合わせ改正法の啓蒙活動を行うとの話を聞きました。
働き方改革の関連からの労基法改正は、一部では70年振りの大改正と言われていますが、実務への対応については現場では戸惑う声も多いようです。   実務上の留意点を纏めてみました。


1. 法の枠組みは大きな変更であるものの、ほとんどの会社の36協定の実務上ではさほど影響のない点がいくつかあります。


① 殆どの会社で徹底されていた月45時間、年360時間の時間外労働の上限について、これまでの規制根拠であった厚労省告示(実はこれは法令と異なり、限度時間を超えても“罰則なし“でしたが)から労基法第36条第4項(新設)に変更され、法違反には罰則(6ヵ月以下の懲役又は30万円以下の罰金)が適用されます。


② 対象期間は1年間に限るものとする。(労基法第36条第2項二―新設)なお、36“協定“の有効期間として1年を超える期間を定めて労使協定を結ぶことは、法理論上は可能ですが、この場合も36協定の対象期間は1年間に限られるため、有効期間の範囲内で対象期間の起算日から1年毎に区分した各期間が対象期間となります。


③ 1日・1か月・1年のそれぞれの期間について、時間外労働の時間と休日労働の日数について定めるものとされました。(労基法第36条第2項第4号)もっとも、行政の36協定の新書式をみると、https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/content/contents/000310071.pdf 休日については、記載事例では「法定休日1か月1日」とあるのみで、1年間について特段の定めはありませんでした。

また、これまでは労働省告示では「1日を超え3か月以内の期間」とされており、1か月以内の期間設定も問題はありませんでしたが、4月以降は必ず1か月についての定めを行い、その上で必要とあれば、適宜の期間を追加して定めることも可能です。その場合、当該期間にかかる延長時間を超えて労働させると、労基法第32条違反となります。


④ 労働時間を延長して労働させることができる時間を適用する期間(1年)の起算日を記載することになります。(新労基則第17条第1項)


⑤ 行政の新書式を見ると、1日・1か月・1年のそれぞれの記載欄に、「法定労働時間を超える時間数」欄に加えて、記載任意ながら「所定労働時間を超える時間数」欄が設けられています。


36協定が法定労働時間を超える時間外労働の制限となることは人事を担当される方々には常識である一方で、所定労働時間が法定労働時間を下回る企業は珍しくはありません。そのような会社では、一般社員のみならず管理監督者でも法定と所定の労働時間を混同して認識されている事例が散見されます。本欄への記載は、36協定への正しい理解を醸成するための一つの工夫となるように思います。   2. 実務上注意すべき改正点は以下の通りです。


① 入口規制
1か月(単月)について労働時間を延長して労働させ、及び休日に労働させられる時間の上限は100時間未満となります。(労基法第36条第6項二)特別条項付きではない36協定の場合でも、1か月については、法定休日労働時間も含めた時間管理をする必要があります。今までのような36協定を遵守するため、「今月は通常の残業を控えて休日出勤をして欲しい」と言った残業要請はできなくなります。(健康管理の点からもかかる要請はそもそも疑問です)       


② 出口規制
2か月から6か月の1ヵ月あたりの平均は、法定休日労働時間も含めて80時間が上限となります。対象期間中のどの2・3・4・5・6ヵ月を平均しても80時間を超えてはならないこととなり、施行日以降、対象期間中のすべての月について、どの月から計算しても隣接する2から6ヵ月の平均時間算出においてもリセットされることがありませんので、常に法定休日労働時間を含めて平均80時間の上限、つまり年間合計960時間を意識する必要があります。


③ チェックボックス
上限規制の規定を遵守することを協定するものとして、協定書式上にチェックボックスが設けられており、そこにチェックがない36協定は法定要件を欠くとして無効となります。(労基則第17条第1項三)チェックボックス前には「上記で定める時間にかかわらず、時間外労働及び休日労働を合算した時間数は1か月について100時間未満でなければならず、かつ2か月から6か月を平均して80時間を超過しないこと」という文章があります。これに抵触しないよう運用するためには、前述の法定休日労働も含めた時間管理に加えて、単月、2か月から6か月までの平均時間の管理が必要となります。なお、日本語の解釈からいえば、「100時間未満」ですので単月における100時間はNG(法違反)、「80時間を超過しない」ですので2ヵ月から6ヵ月の平均80時間はOK(セーフ)となります。