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2021.01.27
- 労働行政の動向
- 実務シリーズ
PCR検査の活用 – 新型コロナウイルスに関する問題提起 その1

新型コロナウイルスの感染拡大は深刻な状況が続いています。首都圏等には緊急事態宣言が発出中です。しかしながら厚生労働省からの新型コロナウイルスに関する企業向けQ&Aは昨年の11月13日から更新されていません。
一方で、年末年始時期を挟み、社員が感染したという相談事例が多くなっています。
その中で、PCR検査に関するご質問、あるいは誤解が複数ありましたので、PMPが懇意としている産業医のご支援も仰ぎながら、PMPなりにPCR検査を企業がいかに活用すべきかを考えてみたいと思います。
1.厚労省はPCR検査、積極活用の姿勢ではない
筆者は、昨年初秋時期に比較的大人数の打合せを控え、念のため民間でのPCR検査を受診しました。(結果は陰性でした)PCR検査の価格も低下し検査方法も簡便となっています。
しかしながら、未だに厚労省が昨年春に発信した通達「PCR 検査は、医師が診療のために必要と判断した場合、又は、公衆衛 生上の観点から自治体が必要と判断した場合に実施しています。そのため、(中略)事業者等 からの依頼により各種証明がされることはありません。」を書き換えていません。
昨年 7 ⽉末、東京都世⽥⾕区では「いつでも、どこでも、何度でも」 を合⾔葉に、気軽に受けられる」PCR 検査の実施を表明、当時1⽇300 件程度だった検査件数を3,000件に増やすことを計画しました。しかしながら厚労省は「科学的知⾒が確⽴されていない」として公費でまかなう⾏政検査の⼿法と認めず、結局頓挫しました。
2.もっとも、感染者が職場復帰する際は、PCR検査は不要の場合があります。
厚労省は、就業制限の解除については、宿泊療養又は自宅療養の解除の基準(※)を 満たした時点で、同時に就業制限の解除の基準を満たすこととして差し支えないとし、感染力がない場合は解除時のPCR検査は必ずしも必須ではないとしています。WHOの退院基準の見直しに沿い、発症日から14日を10日に短縮したという経緯がありましたね。
※1)有症状者の場合
① 発症日から10日間経過し、かつ、症状軽快後72時間経過した場合
② 症状軽快後24時間経過した後、24時間以上間隔をあけ、2回のPCR検査で陰性を確認できる場合
2)無症状病原体保有者の場合
① 検体採取日から10日間経過した場合
② 検体採取日から6日間経過後、24時間以上間隔をあけ2回のPCR検査陰性を確認できた場合
3.PCR検査は陰性証明ではなく陽性証明に効果があると言われています。
厚労省からの企業向けの情報発信は一切ありませんが、PCR検査の陽性者を発見する精度は、かつては70%程度と言われていましたが、今は90%以上。陽性者を洗い出すには有効のようです。
一方で、社員が感染した際に保健所から、「調査の結果、社内に濃厚接触者はいません」との通知があり安心していたところ、社内に次の感染者が出てしまったという事例を複数聞いています。いずれも感染経路不明とされており、社内の最初の感染者からの2次感染であるとは必ずしも言い切れませんが、社内クラスターの発生を回避するためにも、濃厚接触者よりも範囲を広げて早急に陽性者を洗い出す事をお勧めします。そのような場合に、民間による安価で簡便なPCR検査を活用すれば良いのではないかと考えています。
注:今回のNews Letterは試論、私論であり、行政見解に裏付けられた至論ではありません。一種の問題提起ですが、わが社の安全安心のためには、何らかの社内議論が必要ではないかと勝手ながら考えています。
以 上
https://www.pmp.co.jp/english/labor_administration_trends/649/
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