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2021.02.05
- 労働行政の動向
- 実務シリーズ
社員が無症状感染 – 新型コロナウイルスに関する問題提起 その2

ご存知の通り、新型コロナは感染しても無症状という事が珍しくありません。
WHOによれば感染者の約4割が無症状であるとされており、元気で活動に支障のない無症状者の存在が感染が中々抑えられない原因の一つであるとされています。
さてここから問題です。
社員から「PCR検査では陽性が判明したが、無症状。自宅待機中」との連絡。会社としてはどのように対応すべきでしょうか?
1.本人が、無症状だが、いつ発症するかは心配なので会社を休みたい といってきた場合。
休ませましょう。傷病手当金の手続きを進めましょう。ただし傷病手当金は3日間の待機期間があり、手当額は平均標準報酬月額の2/3です。
昨年5月 15 日発、全国健康保険協会事あて厚労省からの連絡文書では、「自覚症状はないものの、検査の結果、“陽性” と判定され療養のため労務に服することができない場合」、傷病手当金は支給されるとの見解です。
医師の診断書がなくとも保険者(健康保険組合等)の算定で構いません。
2.本人は無症状で元気だが、会社を休みたい とは言わない場合。
① いつ発症するかわからないリスク等々、健康管理の面から会社を休ませる事を勧めます。この場合、会社都合の休業となり、労基法で定める休業補償義務が発生します。
ー 雇用調整助成金を活用して最大100%休業手当を助成してもらうには、コロナにより経営環境が悪化し最近1か月間の売上高または生産量などが前年同月比5%以上減少する事が要件となります。
ー 御社が中小企業で、売上高や生産量の減少は見られない場合は、休業命令を出して休業補償を行わないと言う選択肢が残っています。休業支援金(休業前賃金の8割相当)が社員に直接支給されます。休業補償を行わない事については「(休業支援金は)労働基準法の休業手当の支払義務の該当性について判断するものではない」としています。
ー 御社が中小企業だが、労災保険未加入の場合は、要注意です。休業補償を行わない事はセーフでも、労災は遡りで保険料を徴求されかねません。「手続きの勧奨・指導等を行い成立手続が完了したら支給となる。手続を取らない事業主に対しては、国の職権により成立手続を行う」、転ばぬ先の杖ならぬ労災ですね。
ー 御社が大企業で売上高や生産量の減少は見られない場合は、休業命令をだして労基法に定める平均賃金の6割を超える休業補償をお願いします。政府からの補助は全くありません。
この場合、会社が休業命令を出すよりも、本人から休みたいと言ってもらって、健康保険の傷病手当金を利用してもらうと助かるというのは、変な仕組みだとは思いますが…
② 会社がこの社員の担当している仕事は重要でかつ代替する社員もいないので元気であれば働かせたい場合は、次の条件を最低でも整えておきましょう。
1)在宅勤務に限定する
2)毎日の健康観察とその報告を義務付ける (体温測定が一般的ですが、パルスオキシメーターによる血中酸素濃度まで測定させている事例もありました)
3)産業医によるオンライン面談 (オンライン対応ができない産業医のケースもありました)この場合は電話対応もやむを得ないですが、やはり相手の顔を確認できるオンラインとすべきです。当然ですがカメラオフは禁止です
4)その上で、本人と保健所等のやり取りは全てタイムリーに報告させる
新型コロナウイルスの感染拡大は深刻な状況が続いています。首都圏等には緊急事態宣言が発出中です。
しかしながら厚生労働省からの新型コロナウイルスに関する企業向けQ&Aは昨年の12月28日から更新されていません。
そんな現状からの問題提起ではあります。
以 上
https://www.pmp.co.jp/english/labor_administration_trends/657/
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