PMP Premium News
2023.09.08
- 労働行政の動向
同一労働同一賃金への労基署の関与のその後について

岸田政権では、昨年末の今年春闘の組合要求組成の時機にあわせて、非正規の賃上げのため、この同一労働同一賃金の徹底!!との方針を打ち出しました。その一環として、同一労働同一賃金の根拠法となるパートタイム・有期雇用労働法については全く管轄外の労働基準監督署に同一労働同一賃金の法順守の徹底への連携を総理自ら命じました。
これについては昨年12月19日付PMP News「同一労働同一賃金に労働基準監督署が乗り出す!?」でお伝えしていますが、今回はその後の動向等々、お知らせします。
岸田政権が進める新しい資本主義実現会議の議論の中で、今年の2月に改めて「非正規の賃上げには同一労働同一賃金の徹底施行が不可欠」「今でも正規・非正規間の賃金は時給換算で600円程度低い」と指摘がありました。しかしながら、改正パートタイム・有期雇用労働法は、正規・非正規間の不合理な労働条件の格差をNGとするもので、指摘された時給格差600円については不合理性が証明されない限りは総理がいうこの法律の徹底施行を狙っても解消されるものではありません。正規・非正規が同じような仕事をしていても、責任の範囲が異なるということはよく観察されています。その場合は、ある程度の時給格差はNGとまではなりません。皆さんご存じのように、同一労働同一賃金をめぐる最高裁も含めた最近の裁判例でも、特に基本給や退職金、賞与など比較的金額の大きい労働条件については差はあっても不合理とまではいえないとの司法判断は珍しくありませんね。
さわさりながら、この新しい資本主義実現会議では同じタイミングで、「パートタイム・有期雇用労働法の担当部局は全国47か所の都道府県労働局しかない。担当外で助言・指導はできないが、全国321ある労働基準監督署に、同一労働同一賃金調査を行わせることはできる。労基署の調査結果を指導・助言権限を持つ労働局に報告させればよい。」という議論をしています。
仮に皆様が労働局担当官から同一労働同一賃金の法違反との助言・指導を受けた場合、一方で、社内では指摘された正規・非正規の格差についてはこの程度の差は問題ない という意見である場合、さあどうすべきでしょうか?
結論は、行政の助言・指導については、会社の考え方を堂々と展開した上で、その助言・指導には従わない とすることも吝かではないのでは?という事になりました。
まずは52名の労働基準監督官を増員し、2月から労働基準監督官による同一労働同一賃金の事実確認、実際は同一労働同一賃金に関するチェックシートの配布・記入依頼・その収集が始まりました。夏を過ぎて、この労基署調査の結果が各都道府県労働局に集められ、法違反の場合は都道府県労働局長による助言・指導(直接の担当は雇用環境・均等部等、派遣労働者が対象となる場合のみ需給調整室等となります)。法違反までは確認できない場合でも、正規・非正規間の労働条件の格差に対して働き方改革推進支援センターによるコンサルティング活動が始まろうとしています。
仮に皆様が労働局担当官から同一労働同一賃金の法違反との助言・指導を受けた場合、一方で、社内では指摘された正規・非正規の格差についてはこの程度の差は問題ない という意見である場合、さあどうすべきでしょうか?
結論は、行政の助言・指導については、会社の考え方を堂々と展開した上で、その助言・指導には従わない とすることも吝かではないのでは?ということになりました。
実は、パートタイム・有期雇用労働法、法違反に対する助言・指導さらには勧告までは認めていますが、その先の社名公表は、同法第6条第一項、第9条、第11条第一項、第12条から第14条・第16条違反を対象としているものの、均衡待遇を定めた第8条は対象となっていません。この点を押さえておきましょう。
罰則についてみれば、科料の制裁は、第6条第一項違反 10万円以下(第31条)と第18条第一項の報告をせず、または虚偽の申告の場合 20万円以下(第30条)となっています。これだけです。
したがって、行政当局からの同一労働同一賃金の8条(均衡待遇)違反の助言・指導を受けた場合、会社としての考え方を示して反論することで、まず第30条違反を回避します。その上で、指摘された正規・非正規の労働条件格差は会社の考え方に基づいて現状維持のままとしても、科料はもとより社名公表の対象にもならない―要はこれで終了という結果になると思います。 会社の対応に対して行政が司法に訴え、司法判断を仰ぐという法的可能性が残る事も言い添えておきます。
罰則がないから法違反しても構わないなどという事を軽々に言うつもりはありません。法治国家ですし企業にとってComplianceは最重要事項の一つです。しかしながら、日本は自由主義・資本主義国家です。企業活動はできるだけ市場に委ねるべきで、社員の労働条件については、最低賃金とか人種や性別の不当な差別など最低限の法の枠組み以外は企業がそれぞれの事情を考えた上での裁量に任せるべきではないかと思えてなりません。
以 上
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