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2025.11.07

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柔軟な働き方の措置についての企業現場の混乱 その4 3歳未満の子を持つ従業員の情報 – 改正育児休業法関連

10月から施行された改正育児休業法では、3歳から小学校就学始期までの子をもつ社員に対して、仕事と育児の両立支援のための柔軟な働き方を実現するため、企業は2つ以上の選択肢を用意して、社員はその内1つを選択できるとされています。 しかしながら、改正法に沿って育児休業規程を改訂し、それぞれの制度設計を行おうとした際に、様々な疑問が出ているようです。

これまでPMPは労働法の制定や改定に際して、各企業には、法律の各条文に加えて行政機関向けの法解釈を纏めた通達を根拠にして、具体的な対応方法や留意点をお知らせしています。その際には、それぞれの法律を所管する労働各行政の担当者とも様々な意見交換を重ねています。

今回の改正育児休業法に関する問い合わせについては、所管する都道府県労働局は、本省より発表されたQ&A通りの回答に終始していたという感想を持っています。- 各企業の疑問や質問は、各企業の事情も反映する等の事情からQ&Aに関連しつつも実際の「Q」とは違う内容の質問も多いのですが、これらに対して明快な回答は得られないのが現状のようです。 あるいは時間が経過すれば、事態はもう少し落ち着くのかもしれませんが、PMPではこの時点での各企業からの質問と行政からのコメントを参考に、Q&Aには明快な回答がない事項の対応方法についての情報を発信したいと思います。 第1弾(その1)として管理監督者問題、第2弾(その2)としてすでに導入済の制度と改正対応の関係、第3弾(その3)としてパートタイム労働者の対応について取り上げてきました。
今回は第4弾、3歳未満の子を養育する労働者に対して、仕事と育児の両立のための柔軟な働き方を実現するための措置についての、個別の周知と意向確認、並びに個別の意向聴取と配慮の義務(長いのでここでは以後 “個別の周知等” とします)を取り上げました。

“3歳未満の子” については、改正法では、「子が1歳11か月に達する日の翌々日から2歳11か月に達する日の翌日まで」(これも長いので以後、“3歳未満” とします)とさらに明確に定義しています。

さて、今回に先立つ2022年4月1日から施行の “旧” 改正育児休業法では、産後パパ育休を含む育児休業の仕組みの “個別の周知と意向確認” の対象者は “妊娠・出産を申し出た社員” でした。今回の個別の周知等の対象者の定義には、前回改正法であった “申し出た” という言葉はありません。一方で、このような子供を抱える全ての社員情報を会社が持っているとは限りません。
今回の改正法は、義務の対象者となる範囲は企業には正確には把握できないものの、企業は対象者に個別の周知等が義務づけられているという仕組みとなっています。

顧問先企業から、年末調整作業で人事が集める扶養控除申告書が利用できるというお話がありました。しかしながら、扶養控除申告書記載の情報は年末調整のために収集されたもので、これを3歳未満の子対策で利用することは、個人情報の目的外利用となります。 個人情報保護法で認められる個人情報の目的外利用の例外扱いにも、本件は該当しない様です。そこで、扶養控除申告書情報を3歳未満の子対応に利用する事を予め社員に通知しましょう。今年の扶養控除申告書の記載内容は、3歳未満の子を持つ労働者への仕事と育児の両立支援目的で利用する事がある旨、予め通知する事を勧めます。 加えて、以後、毎年の社員への年末調整のお知らせの中で、この個人情報の目的外利用についても付記しておく事もお勧めします。

注:なお、PMPの標準的な就業規則では、人事が収集する個人情報の利用目的の最後に “その他雇用管理” という表記を含めていますので、かかる場合でも問題はありません。

もっともこの3歳未満の子には、社員の扶養家族ではない子(要はもう一方の親の扶養家族の場合)も含まれているため、扶養控除申告書情報の利用も十分ではありません。
労働局は、「全社員に、3歳未満の子を持つ社員はその旨をお知らせください。お知らせくださった社員には別途、育児と仕事の両立支援の個別の周知等を行います」旨の通知を行ってほしいとの対応を始めています。国の労働局で一斉にかかる指導を始めた模様です。しかしながら、この行政指導を支える法的根拠はありません。

とは言え、実務上では、例えば年末調整の事務の際の社員宛通知文の欄外にでも、「差し支えなければ、扶養家族以外の3歳未満の子を持つ社員はその旨をお知らせください。お知らせくださった社員には別途、育児と仕事の両立支援の個別の周知等を行います」のようなメッセージを付記しておくのも一つの効率的な対応かもしれません。

なお、ある労働局担当官は、行政が提案する社員への通知を行わっていない会社の社員から、「当社は仕事育児の両立支援の仕組みがない」と言うような申し出があった場合には、その会社が改正育児休業法に沿って仕事と育児の両立支援に関する育児休業規程改訂は済ませていても、3歳未満の子を持つ社員への個別の周知義務等違反で指導する可能性がある との見解までを披露しました。しかしながら、この担当官の “個人的見解” には、企業責任を問う明確な法的根拠はないと筆者は考えます。今回の法改正で行政が一番の拠り所としているQ&Aですら、本件についての厚生労働省の本省見解は一切ありません。行政官の企業に対する理不尽な “脅し” にしか思えません。要は法の不備でしょう。行政は早急に対応策を講じるべきだとは思います。

以    上

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