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2022.10.18
- 労働行政の動向
- 実務シリーズ
135億円の雇用調整助成金の不正受給

10月17日付の、朝日新聞の報道です。
コロナ禍での業績悪化の中で企業が従業員に支払った休業手当を国が補助する「雇用調整助成金」の不正受給が9月末までに920件、総額135億円であることが厚生労働省への取材で分かったとの事です。なお102億円はすでに回収済みで、残りについても回収を続けている由。都道府県別の不正件数は大阪133件、東京86件、神奈川68件の順となっています。
実は、去る8月4日に、会計検査院は厚生労働大臣に対し、会計検査院法第34条の規定により雇用調整助成金の是正の処置を要求し及び是正改善の処置を求め、並びに同法第36条の規定により改善の処置を要求しました。
会計検査院の動向が厚労省の調査に拍車をかけたのでは?と思います。
会計検査院の要求後、厚生労働省は、不正受給が疑われる場合だけではなく、雇用調整助成金等の申請をした、あるいは支給決定を受けている事業主の一部にも事業所訪問・立入検査を実施するとの発表を行っています。なお、調査は、事前予告なしに行われることがあり、出勤簿や賃金台帳など休業の実態確認に必要な書類がチェックされます。
雇用調整助成金はコロナ禍以前からある助成金制度です。これまでの雇用調整助成金は、行政宛に事前に雇用調整の計画書を提出し、この行政審査を経て、支給申請を行うという、煩雑な申請手続きを要するものでした。実際に申請件数も少なく、どちらかと言えば “人気のない”(失礼しました)助成金でした。
それが突然の年コロナ禍です。マスコミはじめ世論も雇用調整助成金については、雇用を守るというこの助成金の趣旨を認めながらも、煩雑な手続きや各現場の行政対応の遅さを強く非難しました。
その結果、“新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例”として
①事前の計画書の提出を不要とし、
②添付書類も大半が簡略化され、
③さらには通常の助成金ではまずありえない遡及扱いも認める
という、異例の対応となりました。
思い返すと、特例手続きも1回で全体像が決まったものではなく、何回か特例手続きの見直しが行われ、担当する行政窓口にすら最新の手続き情報が行き渡っていない場面も散見されました。助成金手続きに不慣れな労働行政セクションからの職員が助成金窓口の応援に回ることもありました。助成金申請の現場は朝早くから申請のための長い行列が生まれる等、混乱もありました。
企業側もコロナ禍で先行き不透明の危機意識から、通常であれば踏むべき社内手順を省略してでも一日も早い支給申請を行い、休業手当の補填を求める事を最優先としたのではないかと推察します。
これが、結果として支給手続きの誤りに繋がっている事例も珍しくないものと思います。
とは言え、万一、雇用調整助成金の不正受給が発覚した場合は、悪質とされた事例は各都道府県労働局から、事業主の名称、代表者氏名、該当する事業所の名称、所在地、概要、不正受給額、内容が公表されることになります。ご注意ください。東京労働局を例にとれば、今年の6月から9月まで毎月不正事例が公表されていますので関心ある読者諸氏は こちら にアクセスください。
さらに、不正受給が判明した場合 は、「不正発生日を含む判定基礎期間以降に受給した助成金の全額」、「不正受給した助成金の額の2割に相当する額」、「延滞金(不正受給の日の翌日から納付の日まで年3分)」の合計額を返還を求められ、さらに、雇用関係助成金の5年間の不支給措置が加わります。
くれぐれもご注意ください。
以 上
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