PMP Premium News
2023.07.14
- 労働判例
性同一性障害職員の女性用トイレ使用制限を違法とする最高裁判決

7月11日最高裁は、東京高裁の判決を破棄し、経済産業省が性同一性障害職員の女性用トイレ使用を制限することを違法としました。マスコミも大きく取り上げていますが、企業ではこれをどのように評価し、今後の参考とすべきでしょうか?
最初に結論から言えば、最高裁今崎裁判長は、「職場の組織、規模、施設の構造その他職場を取りまく環境、職種、関係する職員の人数や人間関係、当該トランスジェンダーの職場での執務状況など事情は様々であり、一律の解決策になじむものではない」としていますので、本件はあくまでも経済産業省の個別事案に対する判断であり、最高裁判決を受けて“わが社でも同様にしなければならない”というものではありません。
しかしながら、これも今崎裁判長が言う「現時点では、トランスジェンダー本人の要望・意向と他の職員の意見・反応の双方をよく聴取した上で、職場の環境維持、安全管理の観点等から最適な解決策を探っていく」という対応姿勢を人事としては基本に据えておくべきだろうと思います。
さてこの判決、今崎裁判長も含む裁判官全員が補足意見を付すという珍しいものでした。これらも引用の上で、本件をPMPなりに整理しておきたいと思います。
PMPが注目した補足コメントをご紹介しましょう。一部の“切り取り”になってしまうので各裁判官の趣旨がそのままお伝えできるかが心配ですので、裁判官名もつけず、本最高裁の裁判官の補足意見の一部としてご紹介します。また太字はPMPによるものです
・本件についてみれば、経済産業省は本件説明会において女性職員が違和感を抱いているように「見えた」ことを理由として、本件処遇(女性トイレ利用の制限の事 – PMP)を決定し、その後も、上告人が性別適合手術を受けず、戸籍上の記載が男性であることを理由にこれを見直すことなく約4年10か月にわたり本件処遇を維持してきたものであり、このような経済産業省の対応が合理性を欠くことは明らかであり、また、上告人に対してのみ一方的な制約を課すものとして公平性を欠くものといわざるを得ない。(略)(経済産業省は)施設管理者等として女性職員らの理解を得るための努力を行い、漸次その禁止を軽減・解除するなどの方法も十分にあり得たし、また、行うべきであった。
・本件の事実関係の下では(略)上告人が(略)トランスジェンダーで戸籍上はなお男性であることを認識している女性職員が抱くかもしれない違和感羞恥心等を過大に評価し、上告人が自己の性自認に基づくトイレを他の女性職員と同じ条件で使用する利益を過少に評価しており、裁量権の逸脱があり違法として取消しを免れない
・経済産業省としては、職員間の利益の調整を図ろうとして、本件処遇を導入したものと認められるところではあるが、トイレの使用への制約という面からすると、不利益を被ったのは上告人のみであったことから、調整の在り方としては、本件処遇は、均衡が取れていなかった
最後に、今崎裁判長のこのコメントで、本稿は締めくくります。
「人事は、トランスジェンダーの置かれた立場に十分に配慮し、真摯に調整を尽くすべき責務があるという点は忘れてはならない。」
以 上
関連記事(同一カテゴリの最新記事)
-

-
2025.05.16
- 労働判例
1,000円の着服で退職金1,200万円の不支給 – 最高裁は適法と判断
2025年4月17日、最高裁第1小法廷は裁判官5人が一致して使用者側の対応を適法と判断しました。 経緯を簡単にご紹介しましょう。 京都市交通局、勤続29年のバス運転手。…
-

-
2025.04.24
- 労働判例
4年半の自宅待機への評価 ‐ みずほ銀行事件 2024年4月24日東京地裁
みずほ銀行の裁判例をご紹介します。 裁判を起こしたのは、地方銀行からみずほ銀行に2007年10月にキャリア即戦力採用枠で採用された人物「甲」。 甲は、他の従業員に対する言動…
-

-
2024.12.10
- 労働判例
- 実務シリーズ
65歳までの雇用期待を認める2024年10月17日付の東京高裁判決
気になる裁判例がありましたので、情報として皆さんに共有したいと思います。 筆者が所属する社労士会からの情報ですが、ニュースソースは労働新聞とあります。 東京都内の印刷会社で…
-

-
2024.11.08
- 労働判例
最高裁判断を “正社員、待遇下げ「平等」の衝撃” とした報道についてのPMPコメント
10月20日付日本経済新聞で大きく扱われていました。7月の済生会山口総合病院事件の最高裁判断に関する記事です。 同一労働同一賃金の観点から病院の正規職員と非正規職員間の格差是正を…
-

-
2024.07.11
- 労働判例
海外出張中の交通事故で後遺障害等級第1級 ➡ 出張を命じた企業の責任 – 東京高裁23年1月25日
事件の概要 Xは勤務先Y1の親会社Y2に出向、Y2の東京本社に勤務中、Y2の業務にため1週間マレーシアに出張。Y2の孫会社のマレーシア法人のマレーシア人従業員運転の乗用車に同乗し…


