PMP Premium News
2024.07.11
- 労働判例
海外出張中の交通事故で後遺障害等級第1級 ➡ 出張を命じた企業の責任 – 東京高裁23年1月25日

事件の概要
Xは勤務先Y1の親会社Y2に出向、Y2の東京本社に勤務中、Y2の業務にため1週間マレーシアに出張。Y2の孫会社のマレーシア法人のマレーシア人従業員運転の乗用車に同乗したところ、交通事故に遭遇。このマレーシア人は死亡、Xも多発外傷・左太腿切断等の傷害を負い、後遺障害等級第1級という重度の障害が残った。
Xは雇用契約の債務不履行(安全配慮義務違反)、民法715条の使用者責任、自動車損害賠償保障法の運行供用者責任として総額 2億2,456万円の支払いを求めた。
なお、東京地裁は請求をすべて棄却している。
高裁の判断
1.準拠法は日本法である。この点が通則法 1条によりマレーシア法を準拠法とした地裁判断と異なる。東京高裁は通則法 20条を判断の根拠としている。
注1)通則法 第17条(不法行為)
不法行為によって生ずる債権の成立及び効力は、加害行為の結果が発生した地の法による。ただし、その地における結果の発生が通常予見することのできないものであったときは、加害行為が行われた地の法による。
注2)通則法 第20条(明らかにより密接な関係がある地がある場合の例外)
前三条の規定にかかわらず、不法行為によって生ずる債権の成立及び効力は、不法行為の当時において当事者が法を同じくする地に常居所を有していたこと、当事者間の契約に基づく義務に違反して不法行為が行われたことその他の事情に照らして、明らかに前三条の規定により適用すべき法の属する地よりも密接な関係がある他の地があるときは、当該他の地の法による。
2.交通事故を起こした車は自賠法3条の適用要件を満たさず、運行供用者責任は負わない
3.交通事故はこのマレーシア人従業員の運転手の過失によるものだが、運転行為はY2の事業の執行について行われたもので、「民法(使用者等の責任)第715条 ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。」により使用者責任が認められる。ただし、Y1はこれを負わない。
4.Y1・Y2に安全配慮義務違反はあったとは認められない。
5.Y1が負う損害賠償額は 1億6,301万円とする。
本件は通則法の17条・20条の解釈問題だと思います。
高裁判断を参考とすれば、例えば海外の現地法人に出張し、海外現法の同僚あるいは現地で雇用された方の運転する車で交通事故が起きた場合などは、民法 715条の使用者責任が認められることになるという点については人事諸氏は注意を払う必要があります。
閑話休題
なお、本論から外れると判断、記載本文から外しましたが、この裁判では、Xの妻も、甚大な責任を被ったとしてY1・Y2に対して使用者責任、運行供用者責任に基づき 550万円の支払いを求めました。東京高裁はXの妻に対する使用者責任、運行供用者責任はともにないとしましたが、損害賠償責任を認め 220万円の支払いとしています。
以 上
関連記事(同一カテゴリの最新記事)
-

-
2026.03.06
- 労働判例
最高裁から差し戻しとされた名古屋自動車学校事件の高裁判決
最高裁から差し戻しとされた名古屋自動車学校事件の高裁判決が2月26日に出されました。新聞等でも大きく報道されたため、読者諸氏でもご関心のあるテーマだと思います。 最高裁では、「…
-

-
2025.05.16
- 労働判例
1,000円の着服で退職金1,200万円の不支給 – 最高裁は適法と判断
2025年4月17日、最高裁第1小法廷は裁判官5人が一致して使用者側の対応を適法と判断しました。 経緯を簡単にご紹介しましょう。 京都市交通局、勤続29年のバス運転手。…
-

-
2025.04.24
- 労働判例
4年半の自宅待機への評価 ‐ みずほ銀行事件 2024年4月24日東京地裁
みずほ銀行の裁判例をご紹介します。 裁判を起こしたのは、地方銀行からみずほ銀行に2007年10月にキャリア即戦力採用枠で採用された人物「甲」。 甲は、他の従業員に対する言動…
-

-
2024.12.10
- 労働判例
- 実務シリーズ
65歳までの雇用期待を認める2024年10月17日付の東京高裁判決
気になる裁判例がありましたので、情報として皆さんに共有したいと思います。 筆者が所属する社労士会からの情報ですが、ニュースソースは労働新聞とあります。 東京都内の印刷会社で…
-

-
2024.11.08
- 労働判例
最高裁判断を “正社員、待遇下げ「平等」の衝撃” とした報道についてのPMPコメント
10月20日付日本経済新聞で大きく扱われていました。7月の済生会山口総合病院事件の最高裁判断に関する記事です。 同一労働同一賃金の観点から病院の正規職員と非正規職員間の格差是正を…



