判例 36協定の限度時間を超える定額残業代が有効に

判例 36協定の限度時間を超える定額残業代が有効に

毎月一定の残業代を支給するFixed Overtime Allowanceや定額残業代と呼ばれる制度があります。平成24年10月19日札幌高裁のザ・ウィンザー・ホテルズインターナショナル事件では、長時間の設定は安全配慮義務に反し、公序良俗に反するとして36協定の限度時間の範囲での定額残業代のみとの限定解釈でした。

今回X社事件(東京高裁平28.1.27)では、月当たり70時間の時間外労働、100時間の深夜労働の対価として支給されている業務手当を有効と認めました。労基法第37条(時間外、休日、及び深夜の割増賃金)は法所定の方法で計算される額以上の割増賃金の支払いを義務付けているものでしかなく東京高裁は「仮に36協定の特別条項を充足しない時間外労働が行われたとしても割増賃金義務は当然に発生する」「そのような場合の割増賃金も含めて業務手当として給与規定において定めたとしても、それが当然に無効となると解することはできない」と結論付けました。 先の札幌高裁の判決の際には、専門家からは「定額残業代の時間設定を45時間以内とする」 という意見が相次ぎました。 当時PMPでは、この判決を紹介しつつも注意喚起にとどめ、「しばらくは他の裁判例等を注 目しましょう」というアドバイスとしました。

とは言え、定額残業代の固定残業時間については、盛んに議論されている36協定の上限規制 ―労基法改正― が実施される際には、各社の現行制度の見直しが必要となる可能性はあり ます。 引続き注目していきます。