事業場外みなし – 最高裁は適用を否定した二審を破棄し、高裁へ審理を差戻し
4月16日、最高裁判所第三小法廷(今崎幸彦裁判長)、事業場外みなし労働時間制の適否が争点の裁判で、適用を認めなかった二審判決を破棄し、審理を福岡高等裁判所に差し戻しました。事業場外労働関連では、平成26年(2014年)阪急トラベルサポート事件(最高裁平成26年1月24日判決)以来の最高裁判例となります。
二審では日報で具体的な労働時間を把握できており、「労働時間を算定し難いとき」に当たらないとしていましたが、最高裁は記載内容の正確性に関する具体的な事情の検討が不十分と指摘しています。検討に際しては、正確性を確認するための一般的な方法を示すだけでなく、使用者がその方法を現実的に取り得る可能性や実効性も明らかにする必要がある としました。
裁判は、外国人技能実習の監理団体である協同組合グローブ(広島県福山市)の熊本支所で指導員として働いていた労働者が起こしたものです。
その業務内容は、自身の担当地域の受入れ企業を訪問し、実習生の相談対応や生活指導、来日時の送迎や急なトラブル時の通訳等。受入れ企業への訪問スケジュールは労働者に一任され、使用者は貸与した携帯電話により業務上の随時具体的な指示をしたり、報告を求めたことはないと主張。
実際の労働時間管理の仕組みにおいてタイムカード等は導入しておらず、労働者が月末の業務日報にてその月の就業日ごとの始業・終業時刻、休憩時間、訪問先・時刻、業務内容などを自己申告していました。なお、直行直帰、日々の休憩の取得の時期の決定も自らの裁量に委ねられていました。
高裁は、業務日報で詳細な業務の遂行状況に関する報告があり「労働時間を算定し難いとき」に該当しないと判断しました。さらに、業務日報の記載内容に疑義があれば、労働者が訪問する受入れ企業に確認することもできるとし、ある程度の正確性は担保されているとの判断をしています。また、同法人が実務上は業務日報に基づき時間外割増を支払うこともあった点も指摘しました。
しかしながら、最高裁では高裁の業務日報の正確性の担保に関する具体的な事情の検討が不十分としました。“受入れ企業に確認可能” については、一般的に指摘するものにすぎず、現実的な可能性や実効性は具体的に明らかでないとし、同法人が実務上は業務日報に基づき時間外割増を支払うこともあったという事実をもって、業務日報記載の時間の正確性が担保されることにはならない としています。
なお、判決には林道晴裁判官の補足意見が付されています。
そこでは、事業場外勤務は在宅勤務やテレワークなど、近年多様化しており、勤務状況の把握困難性を定型的に判断するのは一層難しくなってきていると指摘していますが、PMPはこの指摘は重要であると考えます。
なお同裁判官は、続けて、個々の事例ごとの具体的な事情に着目したうえで、「労働時間を算定し難いとき」の判断をしていく必要があるとしました。
以 上