柔軟な働き方の措置についての企業現場の混乱 その3 パートタイマーからの申し出 – 改正育児休業法関連

柔軟な働き方の措置についての企業現場の混乱 その3 パートタイマーからの申し出 – 改正育児休業法関連

10月から施行された改正育児休業法では、3歳から小学校就学始期までの子をもつ社員に対して、仕事と育児の両立支援のための柔軟な働き方を実現するため、企業は2つ以上の選択肢を用意して、社員はその内1つを選択できるとされています。
しかしながら、改正法に沿って育児休業規程を改訂し、それぞれの制度設計を行おうとした際に、様々な疑問が出ているようです。

これまでPMPは労働法の制定や改定に際して、各企業には、法律の各条文に加えて行政機関向けの法解釈を纏めた通達を根拠にして、具体的な対応方法や留意点をお知らせしています。その際には、それぞれの法律を所管する労働各行政の担当者とも様々な意見交換を重ねています。

今回の改正育児休業法に関する問い合わせについては、所管する都道府県労働局は、本省より発表されたQ&A通りの回答に終始していたという感想を持っています。- 各企業の疑問や質問は、各企業の事情も反映する等の事情からQ&Aに関連しつつも実際の「Q」とは違う内容の質問も多いのですが、これらに対して明快な回答は得られないのが現状のようです。
あるいは時間が経過すれば、事態はもう少し落ち着くのかもしれませんが、PMPではこの時点での各企業からの質問と行政からのコメントを参考に、Q&Aには明快な回答がない事項の対応方法についての情報を発信したいと思います。

第1弾(その1)として管理監督者問題第2弾(その2)として、すでに導入済の制度と改正法対応の関係 を取り上げてきました。

今回は第3弾、パートタイム労働者の対応を整理したいと思います。実はパートタイマー問題は、昨年11月1日のQ&A公表直後から東京・神奈川の労働局を中心に何度となくPMPでも質問を重ね、それらがようやく反映されたという実感を持っています。
これについては、9月26日のPMP News速報 でご案内の通り、9月24日に厚生労働省から追加のQ&Aが出ています。全文は発信済ですので概略を記載します。

Q2-7-2:パートタイム労働者等の労働契約上1日の所定労働時間が6時間以下とされている者の場合、当該短時間勤務制度の選択肢は措置済みと理解してよろしいでしょうか。または、短時間勤務制度以外で、2つ以上の措置を実施しなければならないのでしょうか。
 ※令和7年1月23日 追加、令和7年9月24日 一部修正(太字)
A2-7-2:パートタイム労働者等についても、新制度(柔軟な働き方を実現するための措置)の対象となるところ、事業主が短時間労働者も含めて、①短時間勤務制度(1日の所定労働時間を少なくとも6時間に短縮できるもの)と②それ以外の4つの選択肢のいずれかの措置で①②合わせて2つ以上講じた場合、新制度(柔軟な働き方を実現するための措置)の措置義務を履行したこととなります。なお、労働者の労働契約上の1日の所定労働時間が6時間以下であることをもって「短時間勤務制度」の措置を講じたことにはならず(略)

要は、1日の所定労働時間が6時間以下のパートタイマーの場合、その会社の措置義務の一つとして、短時間勤務制度を設けることは、パートタイマーも含めた2つ以上の措置として認められる。しかしながら、そのパートタイマーが、短時間勤務制度以外のもう一つの選択肢を希望した場合は、その措置を講じる義務があるというものです。

またそれに続くQ&A2ー7ー3(同じく9月24日に追加されたもの)では、「 『始業時刻等の変更(フレックスタイムも含みます)』『テレワーク等』『養育両立支援休暇』については、労働契約上の1日の所定労働時間を変更することなく利用できるものである必要があるため、当該パートタイム労働者等は、労働契約上の1日の所定労働時間(6時間以下)を変更することなく、②の措置を利用することができます。」となっています。

ご参考までに、PMPがお手伝いしている企業では、パートタイマーには、フレックスタイムやテレワークの選択肢が提供できない為、パートタイマーは適用除外としている福利厚生制度プログラムの中のベビーシッター制度を、子が3歳から小学校就学までの間、パートタイマーから申し出あった場合は認めるという対応に変更しています。
この柔軟な働き方の措置の制度の趣旨は、仕事と育児の両立であり、パートタイマーが正規の労働者に比べると相対的に労働時間の短い働き方を選択し就労を開始した時点で、すでに仕事と育児の両立について問題解決済ではないかと考えられないのでしょうか?

同じくQ&A2-7-2では「短時間労働者には短時間勤務制度を含む2つの措置を講じるような場合、パートタイム・有期雇用労働法により、(a)職務の内容、(b)職務の内容・配置の変更の範囲、(c)その他の事情 のうち、その待遇の性質及び目的に照らして適切と認められるものを考慮し、不合理な待遇差に当たらないようにすることが求められます。」として、同一労働同一賃金の観点からも、このQ&Aが適切であるとしています。
しかし、この解決策は正社員の方から、“これで本当に同一か?”  という感情的疑問や反発が起きてくるようにも思います。

以    上