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2024.04.15
- 労働判例
寒冷地手当支給に関る 同一労働同一賃金 – 日本郵便事件 2023年7月20日 東京地裁判決 –

正社員(昇任昇格予定のない一般社員)には月額10,200円(寒冷期の5か月間のみの支給、年総額は51,000円)の寒冷地手当が支給されているのに対して、時給契約社員にはその支給がないことが、改正前の労働契約法 第20条* に照らして不合理であるか否かという同一労働同一賃金の争いについてお知らせします。
*注:旧労働契約法 第20条はパート・有期雇用労働法 第8条に引き継がれています。
結論は、使用者の勝訴となっています。
裁判所の判断は以下の通りです。
正社員(一般社員)は郵便外務事務・内部事務という標準的業務を、時給契約社員はほぼ同様の郵便局の一般的業務を担当・・・ 職務の内容(PMP)、ともに昇進昇格は予定されておらず、人事異動は転居を伴わない範囲に限定・・・ 職務内容・配置の変更の範囲(PMP)されている。
正社員の基本給には勤務地域による差異は設けられてはいないため、寒冷地手当は、寒冷地域に在勤する正社員が他の地域に在勤する正社員に比べて、寒冷地であることを起因とする暖房用燃料費等の生計費増を補助することにより、正社員間の勤務地域の差によって生じる生計費の負担を緩和し、正社員間の公平を図る趣旨で支給されているものと解する。
これに対して、時給契約社員の基本賃金は勤務地域ごとに定められているため、勤務地域を異にする者の間には基本賃金も勤務地域による差異が無いことに起因する不公平は生じていない。
確かに正社員(一般社員)と時給契約社員の、職務の内容並びに職務の内容・配置の変更の範囲については相応の共通点はあるが、それを考慮しても寒冷地手当の支給の有無の差を不合理であるとは評価できない。
この地裁判決の裁判官のロジックには頷くばかりです。
しかしながら、時給契約社員の基本賃金のうち、暖房用燃料費相当額がいくらだったかという点が裁判では示されたわけではありませんでした。
例えば通勤手当支給の有無を争った同一労働同一賃金では、正社員であろうと有期契約社員であろうと通勤に必要な費用が異なるわけではない(ハマキョーレックス最高裁判決)とされたケースを念頭に置き、寒冷地手当を寒冷地域を原因として発生する暖房用燃料費等の生計費補助とし、暖房用燃料費には正社員・有期契約社員間の差異は無いとすれば、司法の結論は異なったかもしれません。
以 上
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