マイナンバー対応の現状

マイナンバー対応の現状

さて、今年の1月にスタートしたはずのマイナンバーですが、実際のところはどうでしょうか?
大手企業は早々と社内システムの再設計や給与計算等のアウトソーサーへの発注を済ませており、PMPの顧客企業でも大手各社は「マイナンバー対応は終了」との認識です。
一方で、規模や予算などの制約から自社内でマイナンバー対応をせざるを得ない企業も多く存在し、これらの企業に対してはPMPは自社のホームページや人事専門誌でのマイナンバー特集での草稿、またマイナンバー講習を通じて、「最小限」を「ゆっくり」「慎重に」と呼び掛けてきました。それもあり、現在「まだマイナンバーも集めていません」「これから何をすれば良いですか?」という問い合わせが相次いでいます。

まずは現状を見てみます。今年の1月からスタートしたはずの雇用保険の資格取得や資格喪失などの手続きは、今でもマイナンバー記載なしの届出をそのままハローワークでは受け付けています。
昨年マイナンバー対応済みの大手企業には申し訳ありませんが、社員のマイナンバーを集めるのは、今が最善のタイミングであるというのが結論になります。
11月に入ると人事は年末調整準備に忙しくなりますが、今年はその年末調整の準備にマイナンバー収集というフローを追加することになります。

具体的には以下の通りです。
1. 社員のマイナンバーを収集する。
① 番号確認のための社員本人のみの通知カードの写と身元確認のための、これも社員本人の運転免許証またはパスポートの写を集める。
② 所定の書式を作り、そこに社員本人のマイナンバーと扶養家族全員のマイナンバー(それぞれの氏名と続柄も記載)を社員に記載させる。
③ この書式の余白にはマイナンバーの利用目的をすべて列挙しておく。
2. マイナンバーのリスクを考えて、マイナンバー情報はPC等には格納せず、ハードコピーに限定するという企業は、ここで集めた書類をマイナンバー担当者のみがカギを持つキャビネットに格納すれば良い。
念のため、受け渡し簿を作り、以後、マイナンバーを使って書類を作成する場合は、この受け渡し簿に利用記録を記載しましょう。
3. 上記1の後で、年末調整の準備を始める。扶養控除等申告書などの一連の年末調整のための書類を社員に配布する。今回から扶養控除等申告書には本人と配偶者のマイナンバー記載欄が追加されている。ポイントは、新しい扶養控除等申告書の記載収集が始まる前に、会社は社員のマイナンバーを集めるという、収集のタイミングだ。1と3を逆にしてはならない。
4. 新しい扶養控除等申告書には「社員本人と扶養家族のマイナンバーは記載させない」。代わりに、申告書余白に「マイナンバーについては給与支払者に提出済のマイナンバーと相違ない」との文言を付し、社員にこの文言とおりである事を確認させる。また会社はこの文言のそばに「確認済」印を押捺する。年末調整の際の、社員との間のマイナンバー関係の手続きはこれで終了する。
要は、①を済ませておけば、年末調整時に改めてマイナンバーを引っ張り出して特別なことをする必要はない。※1)
5. 最後に残った問題は、今回から税務署提出用の源泉徴収票と市町村提出用の支払調書にマイナンバー欄が設けられ、そこへの対応は事業主義務となっている点だ。※2)
「これまでの行政対応を考えると、直前になって省略扱いや便宜扱いが発表されませんか?」というお問い合わせもいただいている。
念のため、国税庁のホームページは頻繁にチェックはしているが、目下のところはそんな発表はない。

注 ※1:国税庁https://www.nta.go.jp/mynumberinfo/FAQ/gensen_qa.htm#a110-2(Q1-5-1)
  ※2:源泉徴収票でマイナンバー記載が義務付けられているのは税務署提出用のみ。

早くは一昨年から大騒ぎしたマイナンバーも、こうなると随分と尻すぼみしたようにも思えます。
1月 から施行であれば、少なくとも施行の半年から1年前には実際の実務要領までを詰めて行政は情報発信する義務があると思いますが、今の行政対応を見れば“先手失敗!?”、実際には、「最小限」を「ゆっくり」「慎重に」という後手の対応が結果的には良いように思います。来年1月から社会保険関係のマイナンバー対応もスタートしますが、これも当面は何もせずに情報収集のみに努め様子を見ることがよいでしょう。

振り返れば、マイナンバーばかりでなく、昨年の改正派遣法 -窓口で改正法通りに動き出したのは、施行時期の昨年9月30日からほど遠い今年の4月でした。ストレスチェック -昨年12月から施行されていますが、厚労省のホームページに個人が使うことのできるストレスチェック簡易版がアップされたのが、バグもあったが実施直前の11月24日。会社が自社でストレスチェックを実施するために十分使用に耐えられるバージョンをリリースしたのは今年の5月30日。これらを見ても、施行のタイミングにあわせて行政が企業のために実務上の情報発信をしてくれることはあまり期待しないほうが良いと思います。企業の人事の担当者からすれば、法の制定あるいは改正により、「やらなければならな
い」ことはわかっているが、具体的に「どうすれば良いのか?」は、法が施行されても見当もつかないという状況に置かれるということです。