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2025.05.16
- 労働判例
1,000円の着服で退職金1,200万円の不支給 – 最高裁は適法と判断

2025年4月17日、最高裁第1小法廷は裁判官5人が一致して使用者側の対応を適法と判断しました。
経緯を簡単にご紹介しましょう。
京都市交通局、勤続29年のバス運転手。この間、懲戒処分歴はありません。しかしながら、2022年2月11日、5人の乗客から運賃計1,150円を受け取ったが、硬貨は運賃箱に入れたものの、千円札は手で受け取ったが売り上げとしては計上せずに着服したもの。
また同日である11日、12日、16日、17日と停車中に運転席で禁止されている電子タバコの利用も。ドライブレコーダーでこの行為を発見した上司との面談で、当初喫煙は認めたものの着服は否定、後に認めるに至ったという経緯です。
第一審の京都地裁は、2023年7月、「市の判断は不合理とは言えない」として、不支給処分を適法と判断しましたが、2024年2月の大阪高裁では、退職金を “給与の後払い的な性格や生活保障的な側面も軽視できない” とし、1,200万円の退職金不支給を「行為の程度や内容に比べて酷だ」判断し被害弁償が済んでいることも指摘し、市の処分を取り消す判断としました。今回の最高裁判決はこの高裁判断を覆したものです。
最高裁は、「着服はバス事業の運営の適正を害するもの」と指摘し、電子タバコも勤務状況が良好でないことを示すとし、「全額不支給とした処分に裁量権の逸脱はない」と判断、バス運転手の敗訴が確定しました。
最高裁は、2023年最高裁の懲戒免職処分取消、退職手当支給制限処分取消請求 事件を参照しています。
宮城県、勤続30年の県立高校教諭が、勤務先の歓迎会で飲酒した帰りに自動車を運転し物損事故を起こし、酒気帯び運転で逮捕されたもので、県教育委員会はこのベテラン教師を懲戒免職処分とし、退職金約1,725万円を全額不支給としたことの裁判です。高裁は懲戒処分は認めたものの、退職金は一部の不支給に留めるという判断でしたが、最高裁はこれを一転、県教委の判断は「社会通念上著しく妥当を欠いて裁量権の範囲を逸脱しまたはこれを濫用したものとはいえない」とし、退職金の全額不支給も有効としたものです。
この最高裁判断には当時、厳しすぎるという声が上がりましたが、今回の最高裁ではこの最高裁の判断の枠組みを踏襲しています。
以 上
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