在宅という就労環境を会社はどのように整備するのか?- 在宅勤務 その1

在宅という就労環境を会社はどのように整備するのか?- 在宅勤務 その1

在宅勤務が漸く日本でも増えようとしています。新型コロナウイルス感染拡大防止という緊急事態の対応という事情から、とりあえず在宅勤務を開始した企業も多いと思いますが、With Coronaの環境で、常態としての在宅勤務制度を考えた場合、色々と整理しなければならない事項があります。

一つずつテーマを取り上げて、考えてみたいと思います。

まずは在宅という就労環境について考えます。
そもそも、労働安全衛生法では
「事業者は、事業場における安全衛生の水準の向上を図るため、次の措置を継続的かつ計画的に講ずることにより、快適な職場環境を形成するように努めなければならない。
  一  作業環境を快適な状態に維持管理するための措置
  二  労働者の従事する作業について、その方法を改善するための措置
  三  作業に従事することによる労働者の疲労を回復するための施設又は設備の設置又は整備
  四  前三号に掲げるもののほか、快適な職場環境を形成するため必要な措置」(第71条の2)
と事業主に職場環境整備についての義務を定めています。

ここで質問です。在宅勤務者にとって自宅は職場でしょうか?
厚生労働省の自宅が職場であるか否かという判断は曖昧なままであるように思えます。
事業主に職場環境整備として要求されている事項について自宅には“義務”としては求められていません。厚生労働省のスタンスは「労働者が支障なく作業を行うことができるよう、在宅勤務に適した作業環境管理のための助言等を行うことが望まれます。」と“助言する事が望ましい“に留まっていました。直近令和元年の関連通達(基発 0712 第3号)でも「事務所以外の場所で行われる情報機器作業等についても、できる限り本ガイドラインに準じて労働衛生管理を行うよう指導されたい。」という立ち位置です。(太字はPMPによるもの)

さて、Complianceの観点からは、企業には“法的義務”はないという事になりますが、実際は100人在宅勤務すれば100通り、1000人では1000通りの自宅という“職場環境”のはずです。Reality bites! Compliance議論で安心して思考停止せず、現実に目を向けて在宅勤務者の自宅環境に関心を持ち、情報収集し、より適切な環境整備の実現に努力すべきであろうと考えています。

具体的な最初のステップとしては、衛生委員会等で“以下の視点”でまずご議論いただき、その結果を踏まえ、在宅勤務を行う社員に注意喚起をする事から始めるのが現実的かつ適切な対応であるように思います。

“以下の視点”とは、前掲の令和元年の関連通達(基発 0712 第3号)で参照の「本ガイドライン」=「情報通信技術を利用したテレワークの適切な導入及び実施のためのガイドライン」となります。
ガイドラインは https://www.mhlw.go.jp/content/000539604.pdf を参照してください。
具体的には以下のように詳細に解説されています。(以下、太字はPMP)

(1)照明及び採光

イ 室内は、できるだけ明暗の対照が著しくなく、かつ、まぶしさを生じさせないようにすること。

ロ ディスプレイを用いる場合のディスプレイ画面上における照度は500ルクス以下、書類上及びキーボード上における照度は300ルクス以上とすること。
また、ディスプレイ画面の明るさ、書類及びキーボード面における明るさと周辺の明るさの差はなるべく小さくすること。

ハ ディスプレイ画面に直接又は間接的に太陽光等が入射する場合は、必要に 応じて窓にブラインド又はカーテン等を設け、適切な明るさとなるようにすること。

ニ 間接照明等のグレア防止用照明器具を用いること。

ホ その他グレアを防止するための有効な措置を講じること。

(2)情報機器等
 (注 PMP:情報機器については、ノートPCとタブレットのみをここではご紹介します。それ以外は上記厚労省のガイドラインをご参照ください。)

ハ ノート型機器
(イ)適した機器の使用
目的とする情報機器作業に適したノート型機器を適した状態で使用させること。

(ロ)ディスプレイ
ディスプレイは、上記ロの(イ)の要件(=a 目的とする情報機器作業を負担なく遂行できる画面サイズであること。b ディスプレイ画面上の輝度又はコントラストは作業者が容易に調 整できるものであることが望ましい。c 必要に応じ、作業環境及び作業内容等に適した反射処理をしたもの であること。d ディスプレイ画面の位置、前後の傾き、左右の向き等を調整できる ものであることが望ましい。) に適合したものを用いること。
ただし、ノート型機器は、通常、ディスプレイとキーボードを分離できないので、長時間、情報機器作業を行う場合については、作業の内容に応じ外付けディスプレイなども使用することが望ましい。

(ハ)入力機器(キーボード、マウス等)
入力機器は、上記ロの(ロ)の要件(=a 入力機器は、次の要件を満たすものを用いること。①キーボードは、ディスプレイから分離して、その位置が作業者に よって調整できることが望ましい。②キーボードのキーは、文字が明瞭で読みやすく、キーの大きさ及 びキーの数がキー操作を行うために適切であること。③マウスは、使用する者の手に適した形状及び大きさで、持ちやす く操作がしやすいこと。④キーボードのキー及びマウスのボタンは、押下深さ(ストローク) 及び押下力が適当であり、操作したことを作業者が知覚し得ること が望ましい。 b 目的とする情報機器作業に適した入力機器を使用できるようにす ること。 c 必要に応じ、パームレスト(リストレスト)を利用できるようにすること。) に適合したものを用いること。
ただし、ノート型機器は、通常、ディスプレイとキーボードを分離できないので、小型のノート型機器で長時間の情報機器作業を行う場合については、外付けキーボードを使用することが望ましい。

(ニ)マウス等の使用
必要に応じて、マウス等を利用できるようにすることが望ましい。

(ホ)テンキー入力機器の使用
数字を入力する作業が多い場合は、テンキー入力機器を利用できるようにすることが望ましい。

ニ タブレット、スマートフォン等
(イ)適した機器の使用
目的とする情報機器作業に適した機器を適した状態で使用させること。

(ロ)オプション機器の使用
長時間、タブレット型機器等を用いた作業を行う場合には、作業の内容に応じ適切なオプション機器(ディスプレイ、キーボード、マウス等)を適切な配置で利用できるようにすることが望ましい。

以 上

(次号に続く)