賃金のデジタル払い – 11月28日労基法施行規則が改正

賃金のデジタル払い – 11月28日労基法施行規則が改正

10月11日のPMP News でお知らせ済ですが、11月28日に労働基準法施行規則が改正され賃金のデジタル払いが正式に来年4月から実施されることになります。厚生労働省通 達基発1128第4号で取扱い要領が示されました。主要なポイントをご案内いたします。
詳細は 厚生労働省ホームページ をご参照ください。

注:以下、資金移動業者とあるのが、PayPayなどの賃金のデジタル払いの取扱業者となります。

1.書面 又は電磁的記録 による個々の労働者の同意が必要である事。

2.同意書面には以下を記載の事
(1)希望する賃金の範囲及びその金額
(2)労働者が指定する指定資金移動業者名、資金移動サービス の 名称 、指定資金移動業者口座の口座番号(アカウントID)及び名義人(そ の他、 指定資金移動業者口座を特定するために必要な情報)
(3)開始希望時期
(4)代替口座として指定する金融機関店舗名、預金若しくは貯金の種類及び口座番号又は代替口座として指定する証券会社店舗名及び証券総合口座の口座番号

3.次に掲げる事項を記載した書面又は電磁的記録による労使協定の締結
(1)対象となる労働者の範囲
(2)対象となる賃金の範囲及びその金額
(3)取扱指定資金移動業者の範囲
(4)実施開始時期

5.指定資金移動業者口座への資金移動による場合には、所定の賃金支払日の午前10時頃までに為替取引としての利用(労働者の預貯金口座への出金指図、店舗等における代金支払への充当、第三者への送金指図等)が行い得る状態となっていること及び所定の賃金支払日のうちに賃金の全額が払い出し得る状態となっていることを要すること。

6.使用者は、指定資金移動業者口座への 賃金の資金移動を行おうとする場合には、労働者が指定する口座が賃金支払口座として認められている口座であることを厚生労働省が公表する指定資金移動業者一覧を 確認の上、資金移動を行うものとすること。

7.指定資金移動業者口座への資金移動を希望する賃金の金額は各労働者において、その利用実績や利用見込みを踏まえ、為替取引に用いられる範囲内に設定する必要があること。
また、希望額等の設定に当たっては、指定資金移動業者が設定している口座残高上限額=100 万円以下及び 指定資金移動業者が1日当たりの払出上限額を設定している場合には当該額以下に設定する必要があること。

8.指定資金移動業者の破綻時には、指定資金移動業者と保証委託契約等を結んだ保証機関により、労働者と保証機関の保証契約等に基づき、労働者に口座残高の弁済が行われること。

9.労働者の意思に反して権限を有しない者の指図が行われる等により指定資金移動業者口座の資金が不正に出金等された際に、労働者に過失がない場合には損失額全額が補償されること。また、労働者に過失がある場合には個別対応を妨げるものではないが、損失を一律に補償しないといった取扱いとはされないこと。なお、労働者の親族等による払戻の場合、労働者が資金移動業者に対して虚偽の説明を行った場合等においては、この限りではないこと。損失発生日から一定の期間内に労働者から指定資金移動業者に通知することを要件としている場合には、当該期間は少なくとも損失発生日から30 日以上は確保されていること。

10.現金自動支払機(CD)又は現金自動預払機(CD)又は現金自動預払機(ATM)の利用や預貯金口座への出金等のへの出金等の通貨による受取が可能となる手段を通じて、少なくとも毎月1回は労働者に労働者に手数料負担が生じることなく資金移動業者の口座から払出ができること。

11.口座残高については、口座に係る資金移動が最後にから日から少なくとも10年間は債務が履行できるようにされていること。


参考:
(掲記1.2の社員からの 同意書案 となります)

資金移動業者口座への賃金支払に関する同意書案

私(労働者名)は、資金移動業者口座への賃金支払いについて、以下の内容を確認しました。

□ 使用者から、賃金支払の方法として、厚生労働大臣の指定を受けた資金移動業者(以下「指定資金移動業者」という。)の口座(以下「指定資金移動業者口座」という。)のほか、預貯金口座(銀行口座等)又は証券総合口座への賃金支払も併せて選択肢として提示されたこと
□ 使用者又は使用者から委託を受けた指定資金移動業者から、裏面の留意事項について説明を受け、その内容を確認したこと

その上で、私(労働者名)は、資金移動業者口座への賃金支払いについて以下のとおり選択します。

□ 私(労働者名)は、以下の事項を確認した上で、指定資金移動業者口座への賃金支払に同意し、その取扱いは、下記のとおりとするよう申し出ます。
□ 私(労働者名)は、資金移動業者口座への賃金支払いに同意しません。(こちらを選択する場合、以下の記入は不要です)

1.指定資金移動業者口座への資金移動を希望する賃金の範囲及びその金額
※指定資金移動業者口座は、資金の受入上限額が100万円以下とされています。希望する賃金の範囲及びその金額は、裏面の留意事項「2.資金移動業者口座の資金」を確認の上設定することが必要です。

ア. 定期賃金         円
イ. 賞与           円
ウ. 退職金          円

2.労働者が指定する指定資金移動業者名、サービスの名称、口座番号(アカウント ID)及び名義人(その他口座を特定するために必要な情報があればその事項)

・指定資金移動業者名
・資金移動サービスの名称
・口座番号(アカウント ID)
・名義人
(その他必要であれば口座を特定するために必要な情報(例:労働者の電話番号等))

3.指定資金移動業者口座への支払開始希望時期
000    0    年      月      日

4.代替口座として指定する金融機関店舗名並びに預金又は貯金の種類及び口座番号又は指定する証券会社店舗名並びに証券総合口座の口座番号、名義人
※本口座は、指定資金移動業者口座の受入上限額を超えた際に超過相当額の金銭を労働者が受け取る場合、指定資金移動業者の破綻時に保証機関から弁済を受ける場合等に利用が想定されます。

・金融機関店舗名又は証券会社店舗名
・口座番号
・名義人

年   月   日

氏  名    〇 〇    〇 〇    

 

**(別紙)注:以下は同意書の裏面などに記載してください。**

資金移動業者口座への賃金支払に関する留意事項

資金移動業者とは、資金決済に関する法律(平成 21 年法律第 59 号。以下「資金決済法」という。)に基づき、内閣総理大臣(財務局長に委任)の登録を受けて、銀行その他の金融機関以外の者で為替取引を業として営む事業者です。

【1.労働者の同意】
使用者又は使用者から委託を受けた指定資金移動業者は、労働者に対して、以降に記載する事項について説明しなければなりません。また、資金移動業者口座への賃金支払を行う場合には、使用者は、労働者に対して、賃金支払方法の選択肢として、現金又は資金移動業者口座以外に、預貯金口座(銀行口座)又は証券総合口座への賃金支払も併せて提示しなければなりません。仮に、使用者が、賃金支払方法として、現金か資金移動業者口座かの2つの選択肢のみを労働者に提示した場合や、形式的に選択肢を提示していたとしても実質的に労働者に資金移動業者口座への賃金支払を強制している場合には、使用者は、労働基準法(昭和 22 年法律第 49 号)第 24 条に違反し、罰則の対象となり得ます。

【2.資金移動業者口座の資金】
資金移動業者口座の資金は、預貯金口座の「預金」とは異なり、為替取引(送金や決済等)を目的としたものです。
労働者が資金移動業者口座への賃金支払を利用する際には、口座への資金移動を行う賃金額は、為替取引(送金や決済等)に利用する範囲内とし、送金や決済等に利用しない資金を滞留させないことが必要です。このため、資金移動業者の口座への資金移動を希望する賃金の範囲及びその金額(希望額等)については、労働者の利用実績や利用見込みを踏まえたものとする必要があります。また、希望額等の設定に当たっては、資金移動業者が設定している口座残高上限額(100 万円以下)及び指定資金移動業者が1日当たりの払出上限額を設定している場合には当該額以下に設定する必要があります。
また、賃金支払が認められる資金移動業者口座は、資金の受入上限額が 100 万円以下となっています。このため、賃金支払に当たって口座の受入上限額を超えた場合の送金先の金融機関名又は証券会社名及びその口座番号等をあらかじめ登録しておく必要があります。仮に受入上限額を超過した際には、あらかじめ登録された預貯金口座等に資金移動業者が送金を行いますが、その際に送金手数料の負担を求められる場合があります。

【3.資金移動業者が破綻した場合の保証】
銀行等の金融機関が破綻した場合には、預金保険法に基づく預金保険制度により一定額の預金が速やかに保護されますが、賃金支払が認められる資金移動業者が破綻した場合には、預金保険制度の対象とはなりません。資金移動業者が破綻した場合には、資金移動業者と保証委託契約等を結んだ保証機関により、労働者と保証機関との保証契約等に基き、速やかに労働者に口座残高の全額が弁済される仕組みとなっています。

【4.資金移動業者口座の資金が不正に出金等された場合の補償】
賃金支払が認められる資金移動業者口座の資金が労働者の意思に反して権限を有しない者の指図が行われる等の労働者の責めに帰すことができない理由により口座の資金が不正に出金等された際に、労働者に過失が無い場合には損失全額が補償されます。また、労働者に過失がある場合にも損失を一律に補償しないといった取扱いとはされず、少なくとも個別対応とされます。なお、労働者の親族等による払戻の場合、労働者が資金移動業者に対して虚偽の説明を行った場合等においては、この限りではありません。また、損失発生日から一定の期間内に労働者から資金移動業者に通知することが資金移動業者による補償の要件となっている場合には、当該期間は少なくとも損失発生日から 30 日以上は確保することとなっています。

【5.資金移動業者口座の資金を一定期間利用しない場合の債権】
賃金支払が認められる資金移動業者口座残高について、資金移動業者が利用規約等により有効期限を定める場合には、口座残高が最後に変動した日から少なくとも 10 年間は債務が履行できるようにされていることとなっています。

【6.資金移動業者口座の資金の換金性】
賃金支払が認められる資金移動業者口座の資金は、現金自動支払機(CD)又は現金自動預払機(ATM)の利用や預貯金口座への出金等の通貨による受取が可能となる手段を通じて資金移動業者口座の資金を1円単位で払出をすることができます。また、少なくとも毎月 1 回は、労働者に手数料負担が生じることなく資金移動業者口座から払出をすることができます。

以  上