派遣社員対応について – 厚労省企業向情報UpDate(4月10日付)- 新型コロナウイルス対応 #18

派遣社員対応について – 厚労省企業向情報UpDate(4月10日付)- 新型コロナウイルス対応 #18

厚生労働省から新型コロナウイルス関連の企業向け(Q&A)の情報発信で、「9 労働者派遣」という項目が新たに追加されました(4月10日付)。

派遣社員を受け入れている各社(派遣先) が今回の緊急対応として派遣社員の取扱いを検討する場合は、まず派遣法を踏まえる必要があります。
改めてその辺りも含めて派遣社員対応を整理してみました。

1)基本的整理

  1. 派遣社員は派遣元の社員であること。例えば、派遣先が社員に休業を命ずる場合でも、派遣社員には同様の休業命令を発する事はできない。テレワークを命ずる場合も同様。まずは、派遣という民事上の契約の相手方である派遣会社との相談から始め、派遣会社が休業やテレワークを命ずる事になる。
    ➡ 複数の派遣会社を活用している企業は珍しくないが、一つ一つの派遣会社との個別交渉となる。
  2. 厚労省が発信している派遣契約(標準形)には、今回のように派遣先が派遣社員にも休業を求める事態までを想定している条項はない。関連する条項は「労働者派遣契約の解除の場合の措置」の中の「損害賠償等に係る適切な措置」となる。これを踏まえて、派遣契約の一部を変更することになる。
    「損害賠償等に係る適切な措置」では「派遣会社が派遣社員を休業させる場合は派遣先には休業手当以上の“損害の賠償を行わなければならない”」との定めがある。
    ➡ かかる定めは、平成21年厚労省告示第245号「派遣先が講ずべき措置」、6.派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な措置(4)損害賠償等に係る適切な措置を根拠としている。
  3. この仕組みの留意点は以下。
    – 派遣先が休業に際して、労基法第26条休業手当の最低額の6割を上回る休業手当として、派遣社員にもこの適用をと考えたとしても、派遣社員に直接休業手当を支給する事はできない。
    ‐ 派遣先は、休業措置に伴う派遣契約の変更に基づき、派遣会社が派遣社員に休業を命ずるための休業手当以上の金額を支払う。
    派遣社員への休業手当は派遣元が支払い、派遣社員に支払う休業手当額は派遣会社が決定できる(労基法第26条)。
    ➡ 派遣先が6割を上回る休業手当を派遣社員にも支給したいと考える場合は、派遣契約の変更でその旨を定める。
    – 派遣会社も、今回の新型コロナウイルスの緊急対応用、雇用調整助成金を申請する事ができる。
     ➡ 派遣先の雇用調整助成金の対象に派遣社員は含まれない。派遣会社は派遣先から休業手当以上の“損害の賠償”を受けつつ、同時に雇用調整助成金を受給する事もできる。したがって、派遣会社が雇用調整助成金を受給する場合、派遣先と派遣会社間の助成額と派遣先で支払い済みの“損害賠償額”との調整も別途定める必要がある。

2)新型コロナウイルス関連の企業向け(Q&A)の概要
詳細は以下をご参照ください。 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00007.html

  1. 新型コロナウイルスにより事業の休止等の場合でも、安易な派遣契約の解除は控えるというのが基本的考え方。
  2. 1.であるにもかかわらず派遣契約が解除された場合、派遣会社は新たな就業の機会の確保を図り、難しい場合でも休業等雇用の維持を図る義務を負う。この場合、派遣先も雇用安定措置の義務が生じる。(以下はQ&Aにはありませんが)また、一般的な派遣契約には厚労省告示「派遣先が講ずべき措置」を踏まえた「損害賠償等に係る適切な措置」の条項で派遣先の責任を規定している。

派遣社員にテレワークを適用する場合

  1. まずはそれぞれの派遣会社と就業の場所の変更(「テレワークの場合は派遣社員の自宅とする」)等派遣契約の変更手続きを個別に行う。
  2. 派遣労働者の指揮命令、労働時間管理等、労働法の観点では、“対面の実施”を要件とはしていない。一方で派遣社員の担当業務の性格上、上司と派遣社員の“対面の実施”を暗黙の前提とする事が多いため、テレワークの実施に際しては、実際の業務遂行を可能とする創意工夫が適宜求められる。
  3. 派遣先が講ずべき指針に「就業場所の巡回」があるが、電話やメールで就業状況が確認できれば、自宅までの巡回は不要。
  4. 派遣先が派遣社員の自宅住所の把握については問題ないとしつつ、派遣元への事前連絡と派遣社員の同意が必要とされている。
    (Q&Aにはありませんが)テレワークを許容する際、情報セキュリティには万全の措置が必要となるはず。テレワークを行う派遣社員の、自宅住所のみならず自宅での就労環境の確認はその観点からは必須。
    直接雇用の社員であれば、就業規則やテレワーク規程に基づいて提供を求められる社員に係る情報の収集が、派遣社員の場合は制限がある事には十分に留意されたい。

以  上