雇用調整助成金 迷走するオンライン申請 – 新型コロナウイルス対応 -#39

雇用調整助成金 迷走するオンライン申請 – 新型コロナウイルス対応 -#39

厚生労働省から新型コロナウイルスに関する企業向け情報については、先月5月29日以降これといった更新はありません。

この機会に、経営者や人事諸氏の関心の高い雇用調整助成金の、オンライン申請についてPMP所見を申し上げておきます。ただし6月9日現在の情報に基づくものである事を最初にお断りしておきます。またPMP(正確には筆者鈴木個人)の見解ですので、あくまでも「皆様のご参考になれば鈴木は喜ぶ」という程度のお取り扱いとしてください。

総理の「必要とするところには速やかに支給する」という基本姿勢を踏まえて、雇用調整助成金も5月20日にオンライン申請が開始されました。
しかしながら、

1.5月20日の12時から開始されたオンライン申請は1時過ぎに、システムの不具合により一時中断となりました。不具合とは、他社の担当者名やメールアドレスが閲覧可能となる事態でした。

2.6月2日に、厚労省から6月5日12時からオンラインが再開されるとの発表がありました。

3.6月5日午後2時半ごろ、システムの不具合が指摘され午後3時に一時中断となりました。不具合とは、申請者の申請書類(対象労働者の氏名、給与明細、タイムカードを含む情報)が他の事業者10社に閲覧されるという事態でした。

4.6月9日厚労省から「雇用調整助成金等オンライン受付システムの不具合への対応について」というプレスリリースが出されていますが、再開の見通しは一切触れられていません。

プレスリリースの内容に関心ある方は https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_11759.html をご参照ください。

PMPは、雇用調整助成金の申請に際しては、今後についても、オンラインをあてにせず、直接行政窓口に持ち込む、もしくは、郵送とすることを強くお勧めします。
5月20日、6月5日と立て続けのシステムトラブルの内容があまりにもお粗末だというのも理由ですが、実は、PMP(鈴木)は厚労省のオンライン申請は鼻から信用していません。
振り返ると、厚労省が巨額の費用をかけて、社会保険や労働保険の各種手続きの電子化を始めた際も、最初は所定の申請書はオンラインで発信できましたが、添付資料は別途送付の扱いでした。本省が声高らかに電子化のスタートを打ち出した当時、実際の行政窓口では、「電子申請はお勧めしません」「かえって面倒です」「従来通り紙ベースでお願いします」と言われました。この行政窓口の対応は何年も続いた記憶があります。最新のデータでも労働保険の概算・確定の申告の総件数494万件のうち、電子申請は5万件程度、電子申請の普及率は1.1%です。

さて、雇用調整助成金に戻りましょう。オンライン申請マニュアル(2020年6月バージョン)は全39ページの読み応えのある、有り体に言うと冗長でわかりづらく、ポイントが掴みづらい小?冊子です。

マニュアルにご興味ある方は、https://www.mhlw.go.jp/content/000637154.pdf にアクセスください。

マニュアルを見ると、申請の際の添付書類の項に「同一の書類が複数のファイル保存となる場合などは、印刷する順番がわかるようファイル名に順番をつけてください」との注書きがあります。オンライン申請の厚労省対応では、添付書類を印刷していることがわかります。一人10万円の特別定額給付金の自治体の処理状況 – 読み合わせによるチェックという人海戦術をほうふつとさせるものがあります。
「申請をすると申請者による修正ができなくなります」「(行政で申請内容に誤りを見つけた場合は行政から申請書類が差戻しされる事となります。その際は行政が)登録したメールアドレスまたは電話番号に連絡します」(その後で)「手順に従い修正を加えて再申請をしてください。)➡ 早く助成金を入金して欲しいから頑張ってわかりづらいマニュアルに格闘してようやくオンライン申請しても、厚労省では添付書類を印刷してチェックを行うということなのでしょう。万一、申請に誤りがあっても、厚労省からいつ来るかもわからないEメール・電話をただただ待つだけです。
これでは、行列を覚悟しても窓口に並んで書類を直接持ち込み、その場で修正点等を担当官から教えてもらうという、従来の“伝統的”でアナログの行政手続きプロセスが一番効率的で安心できるように思えます。
PMPは雇用調整助成金にはオンラインを使わない方が安全だろうと、少なくとも6月9日現在では思っています。

現在開会中の国会では何かと論議を呼んでいる持続化給付金は、経産省所管であるせいか、オンライン申請は、サクサクと進むという話を聞いたことがあります。
雇用調整助成金は厚労省が5月1日に富士通と約1億円で契約していたとの報道がありました。システムの開発はベンダーが優秀でも依頼者がアホ(これも筆者鈴木個人の見解)の場合は成功しません。富士通もいい迷惑のような気がします。

以 上