高齢化社会への対応 – 4月1日からの社会保険法の改正

高齢化社会への対応 – 4月1日からの社会保険法の改正

3月25日付 PMP News4月1日から変更される厚労省関連の諸制度で、後日詳細とお約束したうちの、社会保険法関連の情報です。
4月1日(一部4月1日以外の施行もあります。詳しくは以下の年金制度改正法の概要の“施行期日”をご参照ください)からの社会保険法改正の概要は以下の通りです。

PMPが各企業にとって関心あると思われる項目のポイントを簡単に纏めてみました。
詳細は厚生労働省HP年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律の概要 (令和2年法律第40号、令和2年6月5日公布) 」をご参照ください。

1. 短時間労働者への適用拡大 2022年10月1日、続いて2024年10月1日の施行開始  – 年金に加えて健康保険も同様の改正となります –

(1) 企業規模要件:  今回の改正では、2022年10月に100人超規模の企業まで、2024年10月に50人超規模の企業までを適用対象とする。
100人超と規模の変更により、新たに45万人が適用となり、1,130億円の事業主負担増となるとの試算。50人超規模の変更の場合は、65万人(100人超からは+20万人)が新たに適用され、1,590億円(100人超からは+460億円)の事業主負担増と試算されている。

【補足①】 企業規模要件の「従業員数」は、適用拡大以前の通常の被保険者の人数。すなわち、フルタイムの労働者+ 週労働時間が通常の労働者の3/4以上の短時間労働者という定義
【補足②】 月ごとに従業員数をカウントし、直近12か月のうち6か月で基準を上回ったら適用対象となる
【補足③】 従業員数のカウントは、法人なら同一の法人番号を有する全事業所単位、個人事業主なら個々の事業所単位で行う

(2) 労働時間要件(週20時間)と現行通り

(3) 賃金要件(月8.8万円)と現行通り 

(4) 勤務期間要件:  現行の1年以上は撤廃、フルタイム等の被保険者と同様の2か月超の要件を適用する。なお、実際の勤務期間にかかわらず、基本的に次のいずれかに当てはまれば1年以上見込みと扱う。① 就業規則、雇用契約書等その他書面において契約が更新される旨又は更新される場合がある旨が明示されていること ② 同一の事業所において同様の雇用契約に基づき雇用されている者が更新等により1年以上雇用された実績があること。


2.在職中の年金

① 在職定時改定の導入: 2022年4月1日施行
改正後は 65歳以上の者については、在職中であっても年金額の改定を定時に行う(毎年1回、10月分から)。

② 在職老齢年金制度の見直し:  2022年4月1日施行
60〜64歳の在職老齢年金制度(低在老)についても、65歳以上の在職老齢年金制度(高在老)と同様、支給停止の基準額を28万円から、現行の65歳以上の 在職老齢年金制度(高在老)と同じ「47万円」に引き上げる。

3.受給開始時期の選択肢の拡大 (1)は2022年4月、(2)は2023年4月施行

(1)繰下げ受給の上限年齢の引上げ
現行70歳の繰下げ受給の上限年齢を75歳に引き上げ、受給開始時期を60歳から75歳の間で選択可能とする。
なお、繰下げ増額率は1月あたり+0.7%(最大+84%=75歳受給開始の場合)。

(2)70歳以降に請求する場合の5年前時点での繰下げ制度の新設
70歳以降80歳未満の間に請求し、かつ請求時点における繰下げ受給を選択しない場合、年金額の算定に当たっ ては、5年前に繰下げ申出があったものとして年金を支給する。
(繰下げ上限年齢を70歳から75歳に引き上げることに伴い、5年以上前の時効消滅した給付分に対応する繰下げ増額の措置)

4.① 確定拠出年金の加入可能要件の見直し等 

4 ① – 1.確定拠出年金(DC)の加入可能年齢の引上げ: 2022年5月施行

(1)企業型確定拠出年金(企業型DC)
企業型DCについて、企業の高齢者雇用の状況に応じたより柔軟な制度運営を可能とするとともに、確定給付企業年金(DB)との整合性を図るため、厚生年金被保険者(70歳未満)であれば加入者とすることができる。

(2)個人型確定拠出年金(個人型DC(iDeCo))
iDeCoについては、高齢期の就労が拡大していることを踏まえ、国民年金被保険者であれば加入可能とする。

4 ① – 2.受給開始時期等の選択肢の拡大: 2022年4月施行

(1)確定拠出年金(企業型DC・個人型DC(iDeCo))
DCについては、現行は60歳から70歳の間で各個人において受給開始時期を選択できるが、公的年金の受給開始時期の選択肢の拡大に併せて、上限年齢を75歳に引き上げる。

(2)確定給付企業年金(DB)(公布日施行)
DBについては、一般的な定年年齢を踏まえ、現行は60歳から65歳の間で労使合意に基づく規約において支給開始時期を設定できるが、企業の高齢者雇用の状況に応じたより柔軟な制度運営を可能とするため、支給開始時期の設定可能な範囲を70歳までに拡大する。

4.②確定拠出年金の制度面・手続面の改善

4 ② – 1.中小企業向け制度(簡易型DC・ iDeCoプラス)の対象範囲の拡大 :     公布日から6月を超えない範囲で政令で定める日に施行
中小企業向けに設立手続を簡素化した「簡易型DC」や、「中小事業主掛金納付制度 (iDeCoプラス)」について、制度を実施可能な従業員規模を現行の100人以下から300人以下に拡大する。

4 ② – 2.企業型DC加入者の個人型DC(iDeCo)加入の要件緩和: 2022年10月施行
規約 の定めや事業主掛金の上限の引下げがなくても、全体の拠出限度額から事業主掛金を控除した残余の範囲内で、iDeCo(月額2.0万円 以内)に加入できるように改善を図る。


5.脱退一時金制度の見直し
:  2021年4月施行開始済み

脱退一時金制度は、短期滞在の外国人の場合には保険料納付が老齢給付に結び付きにくいことがあるという問題について、社会保障協定が締結されるまでの当分の間の暫定的・特例的措置として1994(平成6)年改正により 設置されたもの。
具体的には、短期滞在の外国人に対して、被保険者であった期間に応じて支給(支給上限3年)している。
しかしながら 2019年4月に施行された改正出入国管理法により、期間更新に限度のある在留資格における在留期間 の上限が5年になる(特定技能1号)とともに、制度創設当時と比べて3~5年滞在した者の割合が外国人出国者 全体の約5%から約16%に増加していることから、支給上限年数を見直すこととしたもの。
 【見直し内容】 支給上限年数について、現行の3年から5年に引き上げる。


6.2か月を超えて雇用が見込まれる者の被用者保険の早期加入措置
:  2022年10月施行

現在、厚生年金保険法及び健康保険法では、「二月以内の期間を定めて使用される者」(引き続き使用されるに至った場合を除く)は適用除外としている。2か月以内の雇用契約であっても、これを継続反復しているような場合には、「引き続き使用されるに至った場合」として、被用者保険の対象としている。しかしながら、当該最初の雇用契約の期間は適用の対象となっていないため、雇用の実態に即した被用者保険の適切な適用を図る観点からの見直しを行うもの。
【見直し内容】 雇用保険の規定等も参考にし、「二月以内の期間を定めて使用され、当該定めた期間を超えて使用されることが見込まれない者」を適用除外にすることにより、雇用契約の期間が2か月以内であっても、実態としてその雇用契約の期間を超えて使用される見込みがあると判断できる場合は、最初の雇用期間を含めて、当初から被用者保険の適用対象とする。
雇用保険法第6条第2号では、雇用保険の適用除外者として「同一の事業主の適用事業に継続して31日以上雇用されることが見込まれない者」と規定。

以    上