令和6年4月からの労働条件明示のルール改正に係る厚生労働省通達 その2 有期雇用者の雇用契約書の変更について

令和6年4月からの労働条件明示のルール改正に係る厚生労働省通達 その2 有期雇用者の雇用契約書の変更について

来年4月1日から労働条件明示等に関する法改正が施行されます。改正労働基準法施行規則等に係る施行通達が10月12日に、基発1012 第2号として発信されました。その内容、今回は有期雇用者の雇用契約書の書式の変更についてご紹介いたします。


通達とあわせて、Q&Aや概要をわかりやすく説明したリーフレット、詳しいパンフレットも発信されています。以下になります。ご関心ある方はアクセスしてください。

・通達(基発1012 第2号):  労働基準法施行規則及び労働時間等の設定の改善に関する特別措置法施行規則の一部を改正する省令等の施行等について(無期転換ルール・労働契約関係の 明確化等)
・リーフレット: 2024年4月から労働条件明示のルールが変わります

・パンフレット: 2024年4月からの労働条件明示のルール変更 備えは大丈夫ですか?
・Q&A: 令和5年改正労働基準法施行規則等に係る労働条件明示等に関するQ&A

 

有期雇用契約書(または労働条件通知書)等については以下の事項が変更となります。

1. 有期労働契約の締結時及び契約更新のタイミングごと

(1)対象:全ての有期契約労働者。

(2)内容:更新上限(有期労働契約の通算契約期間または更新回数の上限)の有無とその内容の明示。
更新上限の明示の例としては 「契約期間は通算4年を上限とする」あるいは「契約の更新回数は3回まで」     【改正労基則 第5条第1項 第1号の2

2.更新上限の新設または短縮を行う場合

(1)対象:更新上限の新設または短縮を行う場合の全ての有期契約労働者。

(2)内容: 更新上限の新設または短縮をする前のタイミングで“更新上限を設定”また“短縮”の理由を説明。
なお、説明の際は、文書を交付して個々の有期契約労働者ごとに面談等により説明を行う方法が基本だが、これに限定されず、説明すべき事項を全て記載し労働者が容易に理解できる内容の資料を交付して行う等の方法も差し支えない。説明会等で複数の有期契約労働者に同時に行う等の方法差し支えない。       【改正雇止めに関する基準 第1条】                                 

3. 無期転換申込機会の書面による明示

(1)対象:無期転換申込権が発生する有期契約労働者すべて。

(2)内容:該当する有期労働契約の契約期間の初日から満了する日までの間、無期転換を申し込むことができる旨(無期転換申込機会)を書面により明示。

注:その後、無期転換せず、次も有期労働契約を更新する場合、更新の都度、上記の明示が必要になる点に注意。なお、無期転換申込権を持つ社員が有期雇用下である場合は「有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する事項」は引き続き適用され、他の有期労働者と同様その労働者からの相談に応じ適切に対応するために必要な体制を整備しなければならないと解釈される点にも注意しておく。        【パートタイム・有期雇用労働法 第16条】

4.無期転換後の労働条件 の明示         【改正労基則 第5条第5項・第6項】

(1)対象:無期転換申込権が発生する有期契約労働者。

(2)内容:「無期転換申込権」が発生する契約更新のタイミングごとに、無期転換後の労働条件を書面により明示する。なお、明示する労働条件は、労働契約締結の際の明示事項と同じ。

明示方法は、事項ごとに明示するほか、有期労働契約の労働条件と無期転換後の労働条件との変更の有無、変更がある場合はその内容を明示する方法でも差し支えない。
令和6年(2024年)4月以降は、無期転換後の労働条件について、
    ①無期転換申込権が生じる契約更新時と、
    ②無期転換申込権の行使による無期労働契約の成立時の   それぞれで明示する必要がある。
①の段階で、労基則 第5条 第5項の規定により明示すべき労働条件を事項ごとにその内容を示す方法で行っており、②で成立する無期労働契約の労働条件のうち、同条 第1項の規定に基づき明示すべき事項がすべて同じである場合には、②の段階では、すべての事項が同じであることを書面の交付等により明示することで対応することが可能。
なお、①の段階で、書面の交付等によりパート・有期労働法第6条に定める事項の内容もあわせて明示した場合、②の段階での同条の対応は前述と同様の対応とすることが可能。

労基則
第五条 使用者が法第十五条第一項前段の規定により労働者に対して明示しなければならない労働条件は、次に掲げるものとする。ただし、第一号の二に掲げる事項については期間の定めのある労働契約(以下この条において「有期労働契約」という。)であつて当該労働契約の期間の満了後に当該労働契約を更新する場合があるものの締結の場合に限り、第四号の二から第十一号までに掲げる事項については使用者がこれらに関する定めをしない場合においては、この限りでない。
一 労働契約の期間に関する事項
一の二 有期労働契約を更新する場合の基準に関する事項(通算契約期間(労働契約法(平成十九年法律第百二十八号)第十八条第一項に規定する通算契約期間をいう。)又は有期労働契約の更新回数に上限の定めがある場合には当該上限を含む。)
一の三 就業の場所及び従事すべき業務に関する事項(就業の場所及び従事すべき業務の変更の範囲を含む。)
二~十一 (略)
2~4(略)
 その契約期間内に労働者が労働契約法第十八条第一項の適用を受ける期間の定めのない労働契約の締結の申込み(以下「労働契約法第十八条第一項の無期転換申込み」という。)をすることができることとなる有期労働契約の締結の場合においては、使用者が法第十五条第一項前段の規定により労働者に対して明示しなければならない労働条件は、第一項に規定するもののほか、労働契約法第十八条第一項の無期転換申込みに関する事項並びに当該申込みに係る期間の定めのない労働契約の内容である労働条件のうち第一項第一号及び第一号の三から第十一号までに掲げる事項とする。ただし、当該申込みに係る期間の定めのない労働契約の内容である労働条件のうち同項第四号の二から第十一号までに掲げる事項については、使用者がこれらに関する定めをしない場合においては、この限りでない。
その契約期間内に労働者が労働契約法第十八条第一項の無期転換申込みをすることができることとなる有期労働契約の締結の場合においては、法第十五条第一項後段の厚生労働省令で定める事項は、第三項に規定するもののほか、労働契約法第十八条第一項の無期転換申込みに関する事項並びに当該申込みに係る期間の定めのない労働契約の内容である労働条件のうち第一項第一号及び第一号の三から第四号までに掲げる事項(昇給に関する事項を除く。)とする。

無期転換後の無期労働契約の労働条件(契約期間を除く)は、労働協約、就業規則、個々の労働契約で「別段の定め」をしないかぎり、無期転換前と同一の労働条件が適用される。
しかしながら、「別段の定め」を設ける場合は以下に留意する。
① 無期転換によって業務内容や責任等が変わる場合、社内の他の労働者の業務内容や責任等を考慮し、他の労働者との待遇の均衡が図られた労働条件にすることを検討する。
② 定年後の再雇用など、ほかの有期契約労働者には通常定められていない労働条件(定年など)を適用する場合には、適切に労働条件を設定し、事前に就業規則等で明確化しておくことを勧める。

(3)無期転換後の 均衡を考慮した事項の説明に努める事        【改正雇止めに関する基準 第5条】                           

「無期転換申込権」が発生する契約更新のタイミングごとに、対象となる労働者に無期転換後の労働条件に関する定めをするに当たって、労働契約法 第3条 第2項の規定の趣旨を踏まえ、就業の実態に応じ、他の通常の労働者(正社員等のいわゆる正規型の労働者及び無期雇用フルタイム労働者)との均衡を考慮した事項(例:業務の内容、責任の程度、異動の有無・範囲など)について説明するよう努める

   注:労働契約法第3条第2項は無期転換後の労働者に限定される定めではない。(PMPでは何故?)

労働契約法
(労働契約の原則)
第三条 労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきものとする。
 労働契約は、労働者及び使用者が、就業の実態に応じて、均衡を考慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。
3 労働契約は、労働者及び使用者が仕事と生活の調和にも配慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。
4 労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければならない。
5 労働者及び使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならない。

この説明は文書を交付して個々に面談等により説明を行う方法が基本だが、これに限られるものではなく、説明すべき事項をすべて記載した労働者が容易に理解できる内容の資料を交付して行う等の方法でも差し支えない。説明会等で複数の有期契約労働者に同時に行う等の方法によっても差し支えない。
なお、また、無期転換した短時間勤務労働者(いわゆる無期雇用のパートタイム労働者)は、引き続きパートタイム・有期雇用労働法の対象になる。

以    上