ストレスチェック – 50人未満の事業場にも拡大の動き
ストレスチェック制度は2015年に導入されました。
厚生労働省の調査によれば、メンタルヘルス対策に取り組む事業場の割合は、労働者数50人以上の事業場で 91.3%。一方で、30~49人の事業場では 71.8%、10~29人で は 56.6%と、小規模事業場の取組が低調という結果となっています。
ストレスチェックを実施している事業場の割合 は、義務化されている50人以上の事業場で 84.7%と、100%とはなっていません。さらに、この実施が努力義務の50人未満の事業場では当然のことながら一層低い 32.3%となっています。
精神障害の労災支給決定件数は、年々増加傾向にあり、2023年度は 883 件と過去最多を記録しています。メンタルヘルス不調により連続1か月以上休業する、又はメンタル不調から退職する労働者がいる事業場の割合も、近年上昇傾向にあり、最近では 企業の約1割を超える実績で推移しています。
政府は昨年策定した第14次労働災害防止計画で「メンタルヘ ルス対策に取り組む事業場の割合を2027年までに80%以上」、「労働者数 50人未満の小規模事業場におけるストレスチェック実施の割合を2027年までに 50%以上」、「自分の仕事や職業生活に関することで強い不安、悩み又はストレスがあるとする労働者の割合を 2027年までに50%未満」の目標を掲げていますが、その進捗は思わしくありません。
厚生労働省内の「メンタルヘルス対策に関する検討会」の中間報告では以下のような方向性が確認されました。
1.ストレスチェック制度の効果検証
効果ありとの結論の様です。
ストレスチェックの実施だけでも、約7割の労働者から「ストレスチェッ クの個人結果をもらったこと」を有効とする回答が得られ、医師面接を受けた労働者の過半数から「医師面接(対面)を受けたこと」を有効とする回答が得られたとしています。
2.50人未満の事業場におけるストレスチェック
今後実施を義務付ける方向性となった模様です。
50人未満の事業場では、労働者の プライバシー保護等の懸念から当分の間努力義務とされていますが、労働者のプライバシー保護は、外部機関の活用等により、対応可能な環境は一定程度整備されると考えられることから、ストレス チェックの実施義務対象を 50人未満の全ての事業場に拡大することが適当との結論となりました。
しかしながら、50人未満の事業場においては、産業医も選任されておらず適切な情報管理等が困難な場合もあるので、原則として、ストレスチェックの実施は労働者のプライバシー保護の観点から外部委託することが推奨されるとのこと。またまたビジネスチャンスと色めき立つ業界もあるかもしれません。
また、50 人未満の事業場に、現在の 50 人以上の事業場における実施内容 を一律に求めることは困難として、50 人未満の事業場に即した現実的で実効性のある実施内容とするとされました。
これに伴い、幾つかのポイントがあります。
① 衛生委員会等の設置義務がないことから、関係労働者の意見を聴く機会を活用する
② 実施結果の監督署への報告義務は負担軽減の観点から課さない
③ 委託する外部 機関を適切に選定できるようにしていく必要があることから、厚生労働省の「外部機関にス トレスチェック及び面接指導の実施を委託する場合のチェックリスト」を50人未満の事業場用に見直す
④ 面接指導の対象者者が大幅に増えることが予想されるため、登録産業医等の充実など、監督署管轄区域に設置されている、地域産業保健センターで高ストレス者の面接指導に対応するための体制強化を図る
3.集団分析・職場環境改善の実施状況
最後に、ストレスチェックの集団分析結果を活用した職場環境改善を義務化については、実施状況が 50人以上の事業場で約5割、10人以上 50人未満の事業場で2割弱にとどまっているのが現状であり、時期尚早との結論となりました。
以 上