ZOOM、Eメールによる衛生委員会等の開催 – 情報通信機器を用いた産業医職務の一部実施について その2

ZOOM、Eメールによる衛生委員会等の開催 – 情報通信機器を用いた産業医職務の一部実施について その2

厚生労働省通達「情報通信機器を用いた産業医の職務の一部実施に関する留意事項等について」基発0331第4号(以下、「本通達」という)を材料とするNews Letter 第2弾となります。
「情報通信機器を用いた産業医職務の一部実施について その1」https://www.pmp.co.jp/20210510-2/ も併せてご参照ください。

産業医の以下の職務について、情報通信機器を用いる場合の考え方を纏めています。

産業医の定期巡視 作業環境の維持管理及び作業の管理は実地。1回の定期巡視も実地を義務付け。
本通達では産業医の定期巡視について、「実地で作業環境や作業内容等を確認する必要がある」「製造工程や使用する化学物質も変更等、作業環境や作業内容等への大きな変更も場合も実地で確認することが適当である」としています。
その上で、法が定める最低月1回の産業医の定期巡視についても実地で実施する必要があるとしています。
実はこれについては素朴な疑問を覚えています。例えば、PMPのClientには社員の95%が在宅勤務となっている大手企業があります。社員の実際の就労の場所が旧来の事業場から自宅、サテライトオフィス、ワーケーション等々に拡大している現状を考えれば、旧来の事業場概念に基づき、事業場の月1回の実地による定期巡視を“錦の御旗”とする行政姿勢で、一番大事な産業医による社員の健康保全に有効と言えるのでしょうか?? 
またこの厚生労働省見解により、情報通信機器を用いる産業医活用の範囲がかなり狭められてしまうことになると考えています。

社員の健康障害の原因の調査及び再発防止のための措置はケースバイケース。
健康障害の原因の調査及び再発防止のための措置では、視覚や聴覚を用いた情報収集だけでなく、臭いや皮膚への刺激等嗅覚や触覚による情報を得る必要もあることを想定、原則が実地としています。
しかしながら、健康障害の原因の調査及び再発防止のための措置について取りまとめられた報告書等の確認等により産業医が実地確認は不要と判断する場合はこの限りではないとしています。

ZOOMEメールによる衛生委員会等への出席も工夫により可能となります。
衛生委員会等の関連では厚生労働省は「情報通信機器を用いた労働安全衛生法第17条、第18条及び第19条の規定に基づく安全委員会等の開催について」(令和2年8月27日付 基発0827第1号)を発信しており、本通達ではこれに基づくとしています。

この通達を見てみましょう。
事業場における安全衛生に係る問題の十分な調査審議が確保されるべく、実情に応じた適切な方法により設置・運営を行うとした上で以下の留意点を示しています。

次の3つの要件をすべて満たす事としています。
① 衛生委員会等を構成する委員が容易に利用できること。
② 映像、音声等の送受信が常時安定しており、委員相互の意見交換等を円滑に実施することが可能なものであること。
③ 取り扱う個人情報の外部への情報漏洩の防止や外部からの不正アクセスの防止の措置が講じられていること。
上記3つの要件は、本通達で示された要件とほぼ同じ内容となっています。その意味では対面によらない情報通信機器利用の衛生委員会等開催には何の問題もありません。

また、ZOOMやTEAMSなどの情報通信機器の利用を想定すれば、その衛生委員会等においては「委員相互の円滑な意見交換等が即時に行われ、必要な事項についての調査審議が尽くされていること。」(太字は筆者によるもの)が必要とされています。

ここで是非注目していただきたいのは、即時性を持たない電子メール等の方法による委員会開催も以下の4つの要件をすべて満たす場合は認めるとしている点です。
① 資料の送付等から委員が意見を検討するための十分な期間を設けること。
② 委員からの質問や意見が速やかに他の委員に共有され、委員間で意見の交換等を円滑に行うことができること。その際、十分な調査審議が可能となるよう、委員全員が質問や意見の内容を含む議論の経緯を確認できるようにすること。
③ 委員からの意見表明等がない場合、当該委員に対し、資料の確認状況及び意見提出の意思を確認すること。
④ 電子メール等により多数の委員から異なる意見が提出された場合等には委員相互の意見の調整が煩雑となることから、各委員から提出された意見の調整に必要な連絡等を行う担当者を予め定める等、調査審議に支障を来すことがないようにすること。

筆者は、各社の衛生委員会で上記4つの要件を条件として、電子メール活用による衛生委員会の開催を認める審議を行い、4要件の具体的な運用条件については各委員会で決定するも良し、具体的運用条件は特に定めず、個別の各委員会の議事内容に沿って議長一任として弾力的に運用するようなやり方で始めるも良しとも思います。要は「委員相互の円滑な意見交換等及び必要な事項についての十分な調査審議が可能とする」ような実効性を各社の工夫で担保すればよいのです。
この通達を参照し、ぜひ当社の実態に合う効率的な衛生委員会の開催・運営の仕組をご検討ください。

最後に、今回参照した厚生労働省のそれぞれ通達のHPアドレスを示しておきます。ご参照ください。

・「情報通信機器を用いた産業医の職務の一部実施に関する留意事項等について」基発0331第4号 令和3年3月31日
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T210401K0070.pdf

・「情報通信機器を用いた労働安全衛生法第66条の8第1項、第66条の8の2第1項、 第66条の8の4第1項及び第66条の10第3項の規定に基づく医師による面接指導 の実施について」基発0915第5号 平成27年9月15日/一部改正 基発0704第4号 令和元年7月4日/一部改正 基発1119第2号 令和2年11月19日
https://www.mhlw.go.jp/content/000536457.pdf

・「情報通信機器を用いた労働安全衛生法第 17 条、第 18 条及び第 19 条の規定に基づく安全委員会等の開催について 」基発0827第1号 令和2年8月27
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T200901K0020.pdf

以    上