10月から施行開始の “柔軟な働き方を実現するための措置” のQ&Aが9月24日改訂されました – 改正育児休業法関連

10月1日から改正育児休業法では、特に、3歳以上小学校就学前までの子を養育する社員が、育児と仕事を両立するための柔軟な働き方を実現する措置を講じなければなりません。具体的には、改正法で5つの選択肢とされているもの中から、企業は2つ以上の選択肢を定め、社員はその内から1つを選択できる制度の導入です。
改正法では、10月の施行に先立ち、各社が「柔軟な働き方を実現するための措置」を決定する前に、従業員代表等の意見徴取を行わなければならないとされている関係もあって、7月・8月以降、自社の “措置” 案の検討が盛んに行われていました。
実は、改正法が提示した5つの選択肢のうち、養育両立支援休暇の設立以外の4つの選択肢については、すでに制度として導入済の企業も珍しくありません。7月以降、先行して導入済の自社の制度が、改正法で定める “措置” の要件を満たしているか?という問い合わせが多く寄せられました。
法解釈に関わる事項ですので、担当行政に確認すると、どの行政官も、もっぱら改正法Q&Aを参照しての回答に終始。Q&Aにはない質問には、「施行までにQ&Aの追加等があると思うので・・・」という回答でした。
10月1日施行直前の9月24日にQ&Aにて、新たに追加された5項目並びに2項目は記載の一部修正として、改訂されました。
まずは一部修正の2項目からご紹介します。
Q2-6:「柔軟な働き方を実現するための措置」について、事業主は正規・非正規雇用労働者間で異なる措置を選択してもよいですか。
※令和7年9月 24 日 回答一部修正(修正は太字表記)
A2-6:「柔軟な働き方を実現するための措置」について、正規・非正規雇用労働者間で異なる措置を選択して措置する場合、パートタイム・有期雇用労働法により、(a)職務の内容、(b)職務の内容・配置の変更の範囲、(c)その他の事情 のうち、その待遇の性質及び目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理な待遇差に当たらないようにすることが求められています。併せて、正規・非正規雇用労働者間で異なる取扱いをする場合には、短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改 善等に関する法律(平成5年法律第 76 号)第 14 条第2項及び事業主が講ずべき短時間 労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する措置等についての指針(平成 19 年厚生労働省告示第 326 号)にのっとり、事業主においてその差異の理由を労働者に対して合理的に説明できなければならなりません。
PMP注:追記箇所は、同一労働同一賃金に関する法律名と通達名情報のみです。
Q2-7-2:パートタイム労働者等の労働契約上1日の所定労働時間が6時間以下とされている者(「パートタイム労働者等」という。)の場合、当該短時間勤務制度の選択肢は措置済みと理解してよいでしょうか。または、短時間勤務制度以外で、2つ以上の措置 を実施しなければならないでしょうか。
※令和7年1月 23 日 追加、令和7年9月 24 日 一部修正(修正は太字箇所)
A2-7-2:パートタイム労働者等についても、新制度(柔軟な働き方を実現するための措置)の対象となるところ、事業主が短時間労働者も含めて、①短時間勤務制度(1日の所定 労働時間を少なくとも6時間に短縮できるもの)(※)と②それ以外の4つの選択肢のい ずれかの措置で①②合わせて2つ以上講じた場合、新制度(柔軟な働き方を実現するための措置)の措置義務を履行したこととなります。なお、労働者の労働契約上の1日の所定労働時間が6時間以下であることをもって「短時間勤務制度」の措置を講じたことにはならず、事業主は短時間勤務制度を含む5つの選択肢の中から、2つ以上を選択して措置する義務があります。
また、例えば、労働契約上の1日の所定労働時間が6時間以下の短時間労働者と、1日の所定労働時間が6時間を超える正社員がいる事業所において、正社員には短時間勤 務制度以外の選択肢から2つの措置を講じつつ、短時間労働者には短時間勤務制度を含む2つの措置を講じるような場合、パートタイム・有期雇用労働法により、(a)職務の内容、(b)職務の内容・配置の変更の範囲、(c)その他の事情 のうち、その待遇の性質及び目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理 な待遇差に当たらないようにすることが求められます。併せて、事業主において、短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律第 14 条第2項及び事業主 が講ずべき短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する措置等についての指針にのっとり、その際の理由を労働者に対して合理的に説明できなければなりません。
※= 柔軟な働き方を実現するための措置や子が3歳未満の労働者を対象とする育児・介護休業法第 23 条に基づく措置としての短時間勤務制度については、1日の所定労働時 間を原則として6時間とする措置を含むものとした上で、1日の所定労働時間を5時間とする措置又は7時間とする措置、1週間のうち所定労働時間を短縮する曜日を固 定する措置、週休3日とする措置等も併せて講ずることが望ましいとされています。
次は新たに追加された4項目です。 注:太字はPMPによる注意喚起
Q2-7-3: パートタイム労働者等の労働契約上1日の所定労働時間が6時間以下とされている者(以下「パートタイム労働者等」という。)について、①短時間勤務制度(1日の所定労働時間を少なくとも6時間に短縮できるもの)(※)と②それ以外の4つの選択肢のいずれかの措置とで合わせて2つの措置を事業主が講じ、かつ、当該パートタイム労働者等が②の措置を選択した場合、労働契約上の1日の所定労働時間(6時間以下)を変更しないまま、②の措置を利用できることになるのでしょうか。
A2-7-3: パートタイム労働者等は、労働契約上の1日の所定労働時間(6時間以下)を 変更しないまま、②の措置を利用できることとなります。
事業主が、「柔軟な働き方を実現するための措置」として、①短時間勤務制度(1日 の所定労働時間を少なくとも6時間に短縮できるもの)(※)と②それ以外の4つの選 択肢のいずれかの措置とで合わせて2つの措置を講じた場合、パートタイム労働者等 についても、①短時間勤務制度と②の措置のいずれを利用するかを選択する権利を有することになります。その際、②の措置のうち「始業時刻等の変更」「テレワーク等」「養育両立支援休暇」 については、労働契約上の1日の所定労働時間を変更することなく利用できるもので ある必要があるため、当該パートタイム労働者等は、労働契約上の1日の所定労働時 間(6時間以下)を変更することなく、②の措置を利用することができます。
「保育施設の設置運営等」については、措置の適用前後で所定労働時間を変更することなく利用できることを求める法令上の規定はありませんが、労働者の職種や業務内容等から利用できないことがあらかじめ想定できるものを措置することは、事業主が措置義務を果たしたとは認められないことに留意が必要です。(詳細は Q2-5 をご参 照ください。)
なお、柔軟な働き方を実現するための措置を利用する前の時点において、子が3歳未満の労働者を対象とする育児・介護休業法第 23 条に基づく措置として既に短時間勤務制度(※)を利用している場合には、柔軟な働き方を実現するための措置の選択に際して、短時間勤務制度の利用を継続するか、短時間勤務制度の利用をやめて、②の措置を利用するかを選択することとなります。
※ =前述A2-7-2の「※」と同様
Q2-7-4: 3歳以上小学校就学前までの子を養育する労働者に対して「柔軟な働き方を実現 するための措置」として2つの措置を講じている事業主は、当該労働者が、講じた2 つの措置の一方の措置を一定期間利用し、当該期間の経過後は他方の措置を利用したい旨申し出た場合、これを認めなればいけませんか。
A2-7-4: 3歳以上小学校就学前までの子を養育する労働者は、事業主が講じた2つ以上の 措置のうちいずれを利用するかを選択することができるところ、当該措置の利用開始後、 当該労働者からの申出による変更を認めることは法律上特に義務付けられているもので はないものの、他方で、措置の利用開始後に労働者の家庭や仕事の状況が変化する場合 もあることから、当該労働者が選択した措置が当該労働者にとって適切であるかを確認すること等を目的として、定期的に面談等を実施することが望ましいとされています。
これを踏まえ、当該措置の利用開始後においても、定期的に労働者の家庭や仕事の状況を把握し、利用している措置が就業しつつ子を養育することを実質的に容易にする内容になっていない場合には、利用する措置の変更を含め柔軟に対応することが望ましいです。
Q2-7-5: 「柔軟な働き方を実現するための措置」は、労働基準法第 41 条第2号に定める管 理監督者についても講じる必要がありますか。
A2-7-5: 管理監督者も「柔軟な働き方を実現するための措置」の対象となります。そのため、事業主は、管理監督者についても他の労働者と同様に、「始業時刻等の変更」・「在宅勤務等の措置」・「養育両立支援休暇」・「保育施設の設置運営その他これに準ずる便宜の供与」・「所定労働時間の短縮」のうちいずれか2以上の措置を講じ、3歳以降小学校就学前の子を養育する期間において、これらの措置の利用を可能とする必要があります。
なお、管理監督者については、始業・終業時刻等について広範な裁量が認められていることにより、労働基準法の労働時間等に関する規定が適用除外されていますが、管理監督者であることをもって「所定労働時間の短縮」や「始業時刻等の変更」の措置を講じたことにはならず、事業主はこれらの措置を含む5つの選択肢の中から、2つ以上を選択して措置する義務がある点に留意してください。
また、労働基準法第 41 条第2号に定める管理監督者については、同法の解釈として、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者の意であり、名称にとらわれず、実態に即して判断すべきであるとされています。このため、職場で 「管理職」として取り扱われている者であっても、同号の管理監督者に当たらず、かつ、事業主が講じた「所定労働時間の短縮」の措置の利用を当該「管理職」が申し出る場合には、所定労働時間の短縮措置を講じなければなりません。
Q2-18-2: 事業主が他の事業者が運営する企業主導型保育施設の共同利用契約を結ぶことは、「保育施設の設置運営その他これに準ずる便宜の供与」として認められますか。
A2-18-2: 事業主が他の事業者が運営する企業主導型保育施設の共同利用契約を結ぶことは、「その他これに準ずる便宜の供与」の措置を講じたものとして認められる場合があります。(「その他これに準ずる便宜の供与」の具体的内容については、Q2-15~Q2-17 もご参 照ください。)
例えば、事業主が他の事業者が運営する企業主導型保育施設と共同利用契約を結び、一定の従業員枠を確保した上で(手配)、労働者の保育料の一部または全部を負担する等の措置(費用負担)を行った場合、事業主の「手配」と「費用負担」を満たすため、「その他これに準ずる便宜の供与」の措置を講じたものとして認められます。
他方、次のような場合は「その他これに準ずる便宜の供与」には該当しませんので、 ご留意ください。
・ 事業主が企業主導型保育施設と共同利用契約をあらかじめ結んでおらず、労働者が 自ら保育サービス利用に係る手続を行わなければならない場合(「手配」の要件を満た さないため)。
・ 共同利用契約上、事業主の費用負担が発生せず、労働者が支払う利用料も通常から 減額されない場合等(「費用負担」の要件を満たさないため)。
Q2-18-3:保育施設を運営する事業主が、自社の労働者からの申出に基づきその子を当該保 育施設に入園させた場合や、自社の労働者について従業員枠(上限あり)を設けることとした場合、「保育施設の設置運営その他これに準ずる便宜の供与」として認められますか。
A2-18-3:事業主が設置運営する保育施設にその雇用する労働者の子を入園させる際、当該 労働者以外の者の子と同様、自治体への利用申込と利用調整を経た上で入園させるような場合には、当該労働者について事業主が「保育施設の設置運営その他これに準ずる便 宜の供与」を講じたものとは認められません。
他方、例えば、自社の労働者について、事業主が自ら設置運営する保育施設の従業員枠を活用し、自治体への利用申込と利用調整を経ることなく入園できることとした場合 は、「保育施設の設置運営その他これに準ずる便宜の供与」を講じたものとして認められ ます。
なお、自社の労働者について従業員枠を設けるに当たっては、当該従業員枠が当該保育施設の利用を希望する労働者の数と比較して著しく少なく、利用できる労働者がほとんどいない場合には、「保育施設の設置運営その他これに準ずる便宜の供与」の措置が講じられているとは言えないことにもご留意ください。
大山鳴動?
更新されたQ&Aの全体版は こちら をご覧ください。
以 上