改正民法により入社時の身元保証人の保証書の様式を変更(2020年4月1日付)

改正民法により入社時の身元保証人の保証書の様式を変更(2020年4月1日付)

新型コロナウィルス対応で色々とお忙しい時期とは思いますが、一方で人事としては新年度である4月1日から施行される法改正に対しては例年通り一つ一つ着実に対応していかなければなりません。

採用時に保証人の身元保証書の提出を求める企業は、4月1日の改正民法を勘案して、保証書様式を変更する必要があります。
改正民法第465条の1は改正前(貸金等根保証契約の保証人の責任等)から改正後(個人根保証契約の保証人の責任等)と拡大されました。もともと同条第2項には「極度額を定めなければ、その効力を生じない。」とありますので、4月1日からは、入社時に徴求する身元保証人の保証書にも、保証限度額を設定し、これを記載する必要があります。

これまでは身元保証書に保証限度額を記載する必要はなく、また多くの企業では、身元保証書は言ってみれば新入社員に対する精神的な縛り程度の役割と割り切っており、実際にその社員の責による損害を保証人に請求するという事例はまずなかったのではないかとも想像しています。

そんな事情を抱える人事であっても4月1日以降は保証書に保証限度額を定めなければなりません。限度額はどのような考え方で設定すれば良いのでしょうか?
法の縛りは特にありません。企業が自由に設定する事は可能です。
とは言え、過去の裁判例では、企業が被る損失額全額を賠償する事はまずなく、また本人が負う保証額を100とすれば、保証人が負うべき保証額はせいぜい20-40程度にとどまる程度であるとも言われています。

保証限度額を考える場合の一つの参考事例は会社法(第425条)では株式会社における役員等の賠償責任を「その在職中に株式会社から職務執行の対価として受け、又は受けるべき財産上の利益の一年間当たりの額に相当する額」としています。また身元保証の有効期間は、保証期間を設定しなかった場合は3年、期間を設定した場合でも5年が最長とされています。これらを総合的に勘案すれば、「業務執行の対価として受け、またはは受けるべき社員の初年度の月給の3年分ないしは5年分」という論理構成が考えられるように思います。

                                                                         以  上