PMP Premium News
2021.06.12
- 実務シリーズ
社員死亡の場合の退職金の支払い

現役社員が死亡する、そうそうある事例ではありません。
とは言え、可能性はゼロではないので、特に退職金制度のある企業は、社員が死亡する場合の退職金の支払い方について就業規則(特に、退職金規程)で定めています。
実際には、多くの企業では「労働基準法施行規則に準ずる」という定めが多いように思います。
労働基準法施行規則の定めは最優先順位は配偶者
では準ずるとされた労働基準法施行規則はどのような定めとなっているでしょうか?
労働基準法では、施行規則第42条(施行規則では、さらに43条から46条まで関連規定が続きます)で以下のように定めています。
①遺族補償を受けるべき者は、労働者の配偶者(婚姻の届出をしなくとも事実上婚姻と同様の関係にある者を含む。以下同じ。)とする。
②配偶者がない場合には、遺族補償を受けるべき者は、労働者の子、父母、孫及び祖父母で、労働者の死亡当時その収入によつて生計を維持していた者又は労働者の死亡当時これと生計を一にしていた者とし、その順位は、前段に掲げる順序による。この場合において、父母については、養父母を先にし実父母を後にする。
最近の最高裁判例では事実上の離婚状態の配偶者は認められず
さて令和3年2月25日最高裁、退職金等請求事件で興味深い判例が出されました。
社員(女性)が死亡し、子が退職金の支給を求めました。退職金規程では死亡時の取り扱いは「労基法施行規則に従う」となっており、施行規則で定める最優先順位は配偶者=夫です。しかしながら、亡くなった社員は夫とは事実上の離婚状態でした。
最高裁の判断は、配偶者について現実的観点から判断すべきとしたうえで、死亡した者と互いに協力して社会通念上夫婦として共同生活を営んでいた者をいうべきとし、事実上離婚状態にある場合は“配偶者”に当たらないものというべき というものでした。
最高裁の判断自体は妥当であり、反対される方も少ないとは思います。
人事労務の実務を考えると—
しかしながら、人事労務の実務を考えた場合、死亡社員の退職金を支払う際に、最優先順位にある民法上の配偶者が、事実上の“配偶者”であったかを会社が確認しなければならないという事になります。人事はどのようにして会ったことも連絡したこともないような死亡した社員の配偶者に、死亡した社員との実際の夫婦関係を確認するのでしょうか?
一つの解決方法は、退職金規程を、労働基準法施行規則ではなく、法定相続に準ずると改定する事でしょう。これを勧める弁護士もいます。確かに会社が社員のプライバシーに立ち入る必要はありません。人事としては助かります。
しかしながら、それで良いのでしょうか?死亡した社員は会社の取り扱いに満足するでしょうか?
例えば、退職金規程は現行のままとし、毎年1回、例えば年末調整手続きの際にでも、最優先順位である配偶者について社員本人の意思を確認する というプロセスを加えるのはいかがでしょうか? これですべてが解決するか?と言われれば、まだまだ詰めるべき事項が残っているのではないかと考えています。この段階では問題提起でしかありません。関心ある方々からのフィードバックをお待ちしています。
滅多には発生しないケースの取り扱いではありますが、「結婚しますが入籍はしません」とか「相手は同性です」とか、色々なことが起きている今、社員一人一人の意思を尊重するような仕組みを志向したいと思います。
以 上
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