障害者の法定雇用率は2.3%から2.7%に引き上げられます。

障害者の法定雇用率は2.3%から2.7%に引き上げられます。

月から始まる5年間の障害者の法定雇用率は2.7%です。

障害者の雇用については、人事を筆頭に全社を挙げて懸命な努力を続けているにもかかわらず2.3%という現在の法定雇用率を達成できない企業も少なからずあると思います。
障害者雇用促進法では、雇用率は少なくとも5年毎にその推移を勘案して設定するとされています。 現行の雇用率2.3%は、2018年(平成30年)に設定されたものです。2023年(令和5年)は5年ごとの見直しのちょうど節目に当たります。
新しい法定雇用率は2.7%(現状比+0.4%)となります!
とは言え、一気に2.7%に引き上がるのではなく段階を踏んで実施されます。

2023年(令和5年)度は障害者雇入れに係る対応の計画期間として現状の2.3%に据え置かれます。その後、2024年(令和6年)度に2.5%、2026年(令和8年)度に2.7%と雇用率は段階的に引き上げられることになります。
具体的なイメージを持っていただくには、2023年度は現状通り障害者の雇用は社員43人に一人だが、翌2024年度は40人に一人、2026年度からは37人に一人の割合で障害者の雇用が義務付けられると説明した方が宜しいかもしれません。

障害者雇用を振り返れば

障害者雇用促進法を振り返ってみましょう。
法改正によってそれまでは努力義務だった障害者雇用が義務化されたのは1976年、その時の雇用率は1.5%でした。
1987年には法の名称が現在の障害者雇用促進法に変わり、雇用率は1988年に1.6%に引き上がりました。

1998年には、知的障害者を対象に含め、雇用率は1.8%に、2013年には、2%に引き上げられました。
同じ2013年の法改正により、精神障害者も障害者雇用の対象に含めることになり、雇用率は2018年に2.2%、2021年に2.3%と引き上げられています。
雇用率を0.5%引き上げるのに、最初は37年間をかけましたが、次の0.5%は13年間で行おうとしています。

障害者雇用を促進するにあたって

40人の企業が一人の障害者を雇用するよりも、400人の企業が10人の障害者を雇用する方が就労環境の整備も含めて実はやり易いという現場のお話を伺ったことがあります。
障害者雇用は企業の責任であることは重々承知していますが、中小企業が初めて障害者を雇用した際の経験談を伺うと、厚生労働省が呼び掛けている障害者雇用を支援するジョブコーチ人材の社内での育成などを見るにつけ、国が企業努力に頼る前に行政が整えるべきことが沢山あるようにも思います。

とは言え、今回の法定雇用率の引き上げに伴い、障害者の雇入れに必要な一連の雇用管理に対する相談援助の助成金が新たに創設される予定ですし、中小企業に対しては、助成金の上乗せや既存助成金の拡充も検討されています。

厚生労働省は障害者雇用の促進としてテレワークなどの推進を推奨していることも触れておきましょう。
厚生労働省の労働政策審議会障害者雇用分科会の資料を見ると、テレワーク勤務のための環境整備に加えて、フレックスタイム制の活用や、本人の希望に応じた短時間労働による就業の促進などを勧めています。特にテレワークについてはICT 等の活用により、通勤が困難な障害者、感覚過敏等により通常の職場での勤務が困難な障害者及び地方在住の障害者等の雇用機会を確保するためには有効な策であるとしています。地方在住で、親御さん等ご家族と同居されている障害者の方が、在宅のまま働くことができるのであれば、それだけでも障害者雇用が一歩前に進むことになります。

また短時間労働の活用も検討してください。
週所定労働時間が10時間以上20時間未満の障害者も0.5人分とカウントされる等の障害者雇用に係る本図の仕組みはすでにご存じだと思います。
まずは短時間就労から始め、わが社での就労に慣れるに従い就労時間を延長していくなどの対応も是非試みてください。


同じような発想ですが、最初は非正規社員で採用し、慣れるにつれて正規社員に転換するなど、色々な弾力的な対応により、障害者雇用を促進することが求められています。

行政で40年もの間、公表された障害者雇用実績が水増しだったというニュースは2018年でした。そんなことがふと過ったので、行政部門での障害者雇用についての厚生労働省の審議会障害者雇用分科会の資料も一部ご紹介しましょう。
「公務部門における障害者の活躍は、我が国の政策決定過程(障害者雇用政策に限らない。)への障害者の参画拡大の観点からも重要である」として、「ノーマライゼーション(障害者を特別視するのではなく、一般社会の中で普通の生活が送れるような条件を整えるべきであり、ともに生きる社会こそノーマルな社会であるという考え方)、インクルージョン(包容)、ダイバーシティ(多様性)、バリアフリー(物理的な障壁のみならず、社会的、制度的及び心理的な全ての障壁に対処するという考え方)、ユニバーサルデザイン(施設や製品等については新しいバリアが生じないよう誰にとっても利用しやすくデザインするという考え方)等の理念の浸透に繋がり、政策だけでなく、行政サービスの向上の観点からも重要である。」としています。
ここで示されたノ―マライゼーション、インクルージョン、ダイバーシティ、バリアフリー、ユニバーサルデザインは、企業が障害者雇用を進める上でも大切なキーワードとなってくると思います。

以    上