厚生労働省 – 労働基準法制研究会 報告書が発表されました

昨年1月から12月までの1年間、都合16回開催された厚生労働省内の労働基準関係法制研究会の報告書が発表されました。
『 労働基準関係法制研究会報告書 』を是非ご参照ください。
労働基準法は戦後間もない1947年に制定されました。1987年に週労働時間を48時間から40時間への変更を中心とする大改正が行われ、今回の研究会、スタート直後にはそれ以来の大改正も視野に入れていましたが、今各社が悩みながらも色々と工夫をこらそうとしている多様な働き方を実現するために必要な人事改革の大きな方向性までを示すのはなかなか難しかったようです。
とはいえ、報告書がまず掲げる「全ての働く人が心身の健康を維持しながら幸せに働き続けることのできる社会(➡ 会社に置き換えても良いと思います- PMP)を目指すという「守る」の視点と 働く人の求める働き方の多様な希望に応えることのできる制度を整備するという「支える」の視点」、これら二つの視点が重要という前提の整理は、企業人事に取り組み方々にとっては大事な視点だと思います。
報告書では、まず、労働者や事業、また事業場という労働基準法等で重要なこれらについて改めて検討を加えています。確かに、フリーランス新法も昨年11月は施行され、ギグワーカーのようなこれまでの労働者とはやや異なる働き方も出現しており、労働基準法等の対象となる “労働者” とはという定義も改めて見直す必要はあると思います。
筆者は特に “事業場” 概念の見直しの検討に注目していましたが、結局は、事業場単位を前提の、今の労働基準監督署等 労働行政を考えれば当面現行の事業場を中心にままで、状況応じて、複数の事業場単位や企業単位も例外的に認めるという方向性で落ち着いたように思えます。
筆者の注意を喚起したのは、労使コミュニケーションの項。特に、現行の労働者代表制の問題点を指摘している点です。
労働組合の組織率が16%にまで低下し、組織率の急激な改善が見込めない現状にあっては、労働者代表の役割は相対的に重要となっているはずですが、一方で報告書では、「現行の労働基準法では、『過半数代表』や『過半数代表者』は明確には定義されておらず、過半数代表が締結の一方の当事者となる手続を定める条項において個別に規定されているのみである。」としています。そのため、選出手続、担うべき役割及び使用者による情報提供や便宜供与、権利保護などを明確にする必要があるとしています。
実務大きな影響がありそうな労働時間関連ですが、以下のような具体的な指摘があります。これらは早晩、法改正に繋がるとして各社対応に備えてください。
・精神障害の労災認定基準も踏まえ、「13日を超える連続勤務」の禁止
・法定休日の特定
・副業・兼業については、健康確保のための労働時間の通算は維持しつつ割増賃金の計算上は通算しないこと
・フレックスタイム制についてはテレワーク日と通常勤務日が混在する場合でも活用できるよう部分的フレックスタイム制の導入を進めること
・「勤務間インターバル制度」の導入促進と法規制強化、
・法定労働時間を週44時間とする特例措置の撤廃等となります
久々の労働基準法の抜本的見直しに繋がるかという期待もあり、PMPでも当研究会の動向を注視していましたが、国会で議論され法改正に繋がるような事項としては、抜本的というよりも、実務上の必要性からの対応という色彩が色濃く、働き方に大きな影響を与えるる同基準法の抜本的見直しは今回は問題提起に留まってしまうのかもしれません。
このあたりは、今後の国会等の動向を注視しようと思います。
以 上