昨年度、全国労働基準監督署の労働法違反の調査結果から

昨年度、全国労働基準監督署の労働法違反の調査結果から

昨年度、全国で労働法諸法令違反で送検された総事業場数は493件。
そのうち、法違反の大半は、労働安全衛生法違反や最低賃金法違反でした

多くの企業に関心のある労働基準法違反を確認したところ、1つの事業場で複数の労働基準法違反となるケースや、労働安全衛生法違反と労働基準法違反となるケースもあるため、前掲の違反事業場数と一致はしないものの昨年度1年間で以下のような実態が分かりました。

労働基準法違反件数は全部で86件。
3件以上の同一法令違反を以下のように取り上げてみました。因みに1件あるいは2件の法令違反の総数は8件となります。

32条違反が全体の41%となる35件で最大のもの。
36条違反の6件を加えると41件、48%とほぼ半数が労働時間違反となります。
32条違反は1日8時間週40時間の労働時間の原則違反ですが、36条違反は36協定のうちの労働時間の限度時間超えが典型的な違反例のように思えます。
もっとも、今回の厚生労働省の発表から、各都道府県の摘発事例の説明を見ると、32条違反と36条違反、その間には厳格な線引きなどはなく、監督署はその内の何れかで上げようとしているかの如くの感があります。
過去のPMPでの是正勧告の経験に照らしても、労働基準法第32条(労働時間の原則)と第36条(時間外労働の例外)については、監督官によってはあまり厳密に区別せず、場合によってはこの2つの違反をセットで扱ったり、あるいは労働時間の原則である第32条違反に集約したりという扱いだったようにも思えます。
要は、違法残業という違反行為の実態の摘発を中心に据え、条文の形式的な違いにそこまでこだわっていないことが多いのが現実のようです。
罰則は32条違反も36条違反も6か月以下の懲役または30万円以下の罰金と同じです。

次に、24条違反が13件、24条違反は賃金の支払い原則違反で、多いのは全額払いの原則の違反です。

続いて、37条違反が5件。これは割増賃金の支払い義務違反です。賃金支払いで合算すると18件、全体の22%。

15条違反が4件。これは労働条件明示義務違反です。
35条違反も4件あり、休日労働の労基法違反となります。

最後に、101条違反も3件あります。
これは労働基準監督官に対する虚偽申告を問われたものです。労働基準監督署の立入検査、PMPでは毎月のように各社の対応のご相談に応じていますが、各社人事の方々の中には初めて経験される方も珍しくないと思います。
監督官には真摯かつ愚直に対応されることを基本としてください。労働基準監督官は行政官であると同時に司法警察官でもあります。

上記詳細、厚生労働省発表の『労働基準関係法令違反に係る公表事案(令和6年4月1日~令和7年3月31日公表分)』は こちら をご覧ください。

以    上