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2026.02.27
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- 実務シリーズ
2026年賃上げの動向

今年度春闘もいよいよ山場を迎えつつあります。
1月末に、連合と経団連との間で春季労使交渉を巡る諸課題をテーマとした意見交換会がありました。
そこでは、2023年、24年、25年と3年にわたる賃金引き上げの力強いモメンタム(勢い)については「2023年を起点として、24年に加速し、25年には定着が実感できる状況になった」との共通認識が確認され、さらには「26年は、この力強いモメンタムをさらに定着させる」方向性も共有されています。
PMPが注目しているのは、経営者側の経団連が「ベースアップ実施の検討を賃金交渉の『スタンダード』と位置付けた。」という点です。
過去30年間を振り返れば、総じて、賃上げに際しても、その内訳は定昇と一時金が主体となっていました。これからの日本経済を展望すれば、少子高齢化の急速な改善などはあり得ないため、労働市場のひっぱくは当面継続します。これを原因とする更なる賃上げ圧力が当面継続するものと思われます。
賃上げに際して、経団連の宣言通りに、今後、常に一定のベースアップが含まれるのであれば、かつて日銀が目指せども実現しなかった、ディマンドプル型の穏やかなインフレーションが実現できるかもしれません。それが実現すれば、日本経済の持続的成長も夢物語ではなくなると思います。願わくば、政府がブレることなく、企業に対してベアを含めた持続的賃上げを実現させるための支援を迷わずに続けて頂きたいと思います。
しかしながら、一企業の立場で考えると、ベア付の賃上げで留まることでは不十分であるのではとPMPは考えます。社会保険料負担問題です。
少子高齢化の今後を展望すれば、企業の社会保険料負担増は間違いのないところ。給付付き税額控除は導入すべき施策ですが、この策は企業の社会保険料負担にはさほどの影響はありません。一方で、社会保険料の仕組みを考えれば、賃上げは社会保険料負担増に直結します。ラフな試算ですが、賃上げに伴う社会保険料負担増は1%程度と言われています。要は、ベースアップ相当額を、旧給与理論通りに賃金カーブの平行移動として一律に実施すれば、社員はインフレに加えて、さらに1%の社会保険料負担増を負うことになります。
企業単位でこの問題を考える際には、これまで議論した賃上げに要する総ファンドをいかに再分配するかを、ここでもう一度考えることが必要ではないかと思います。ベースアップ=月額基本給増という、昭和の賃上げ構造をそのまま踏襲すれば、社会保険料負担は増える一方でしょう。
この問題を考える際に、企業はもう一つ別の視点を加えるべきだと思います。それは社員一人当たりの生産性の引き上げという視点です。少子高齢化が進み、労働市場のひっぱくした状況が改善しないことを考えれば、一人当たりの生産性の引き上げは必須です。仮にその企業の業績が翌年も同程度であれば、この生産性向上は人員減で実現しなければなりません。企業は自らの存在を継続させるには、少しでも成長への努力が望まれますが、同時に、余剰人員を絞り出して、従前の業務量に対応すべき人員数は前年比削減するという努力が必要とされるはずです。それが結果として、ディマンドプル型のインフレと賃上げの好循環を支える一つの要因となると思います。
纏めれば、マクロ的には高市内閣が謳う成長戦略を目指すことに間違いがありませんが、各企業の立場にたてば、特に、人事部門は、率先して、一人当たりの生産性の引き上げにつながるような人件費の再分配策を志向すべきです。
具体的には、これまで以上にここは変動給へのシフトを併せることで、貢献度に応じた賃金増に一層の傾斜をかけ、年功的な自社の賃金構造に手を付けるべきだと考えます。
政府の旗振りが成功し、日本経済が持続的成長軌道に乗ったとしても、かつての高度経済成長の再現などは望むべくもなく、低位の安定成長がせいぜいのはずです。人手不足の労働市場も一気に解決するはずもありません。そのような日本市場での人材獲得競争に打ち勝つには、成績優秀者等に対する高額報酬制度の実現を志向するのが一つの解決策のように思います。日本経済が30年振りに動こうとしています。人事制度改革はこのタイミングで早めに行うべきではないでしょうか。
以 上
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