PMP Premium News
2026.06.19
- 労働法改正
- 実務シリーズ
成年後見制度が変わります ‐ 民法改正法案が成立

高齢化が進む日本では、認知症などで判断能力が十分ではなくなった人の暮らしや財産管理を支援する「成年後見制度」は益々その重要性が高まるものと思われますが、現在の成年後見制度についていろいろな問題点が指摘されてきました。
成年後見制度は 2000年に、明治以来続いていた禁治産・準禁治産という仕組みを改め、個人の尊厳を守り、自分らしく暮らす=ノーマライゼイションを志向するという新しい方向性のもとで民法が改正されスタートした制度です。
一方で、日本は 2014年に国連から成年後見制度は、本人の法的能力を制限し「代行決定」を行う仕組みが国連の障害者の権利条約に違反するとの勧告を受けています。日本の成年後見制度はドイツやフランスの先行事例を参考にしていますが、国連は同じくドイツやフランスにも同様の勧告を行っており、筆者が調べた限りではドイツはすでに大幅な法改正を済ませています。
なお、成年後見人数は最高裁の統計によれば 約 25万人、そのうち最も重度な後見人は 18万人程度(ちなみに、中度の保佐人は 5.5万人、軽度の補助人は 1.5万人程度)。潜在的ニーズを持つ人数を想像すると、かなり少ないのが実情のようです。
今回改正される主要点は、
1. 利用期間が、“原則本人が亡くなるまで” から、“必要な期間が過ぎたら、利用を終えることができる”
2. 後見人の選定が、“一度決定したら一生続く” から “本人の意思や家族の意向で交代可能”
3. “「後見」「保佐」「補助」” の3段階から “「補助」に一本化”
総括すれば、本人が必要な時に必要なサービスを受け取ることができる仕組みに変わっていくように思えます。
一方で、今までの成年後見人から新しい補助人には、これまで以上に、必要とする方のニーズを的確に把握し、このニーズにきめ細かく対応するだけの知識とスキルが求められていくようになるでしょう。
改正法の施行時期は、公布日から2年6か月を超えない範囲とされているため、新しい成年後見補助人制度のスタートは 2028年ごろの見通しとなります。
以下は厚生労働省が1月に取り纏めた「成年後見制度等の見直しについて」(社会保障審議会)の資料から抜粋となります。
もっとも、このPPTのページのみは法務省が作成したもののようです。

最後に、参議院にて6月9日可決成立した、成年後見制度に関連する民法の改正法案を参考までにご紹介しておきます。
民法等の一部を改正する法律案(閣法第四三号)(衆議院送付)要旨
本法律案は、高齢化の進展等社会経済情勢の変化に鑑み、成年後見及び遺言の制度を国民がより利用しやすくする等の観点から、民法等の一部を改正しようとするものであり、その主な内容は次のとおりである。
一、民法の一部改正
1 後見及び保佐の制度を廃止し、事理弁識能力が不十分である者全てを補助の制度の対象とする。
2 家庭裁判所は、事理弁識能力を欠く常況にある者のため、その者がした法定の重要な財産上の行為を取り消す権限等を有する特定補助人を付する旨の審判をすることができる。
3 家庭裁判所は、必要がなくなったと認めるときは補助の制度に係る各審判を取り消すことができる。
4 家庭裁判所は、補助開始の審判を受けた者の利益のため特に必要があるときは、補助人を解任することができる。
5 補助人は、補助の事務を行うに当たっては、補助開始の審判を受けた者の心身の状態に応じて、適切な方法によりその事務に関する意向を把握するようにしなければならない。
6 普通の方式の遺言として、電磁的記録等により作成し、法務局で保管する保管証書遺言を創設する。
7 特別の方式の遺言のうち死亡危急時遺言等について、遺言する状況を録音及び録画により記録すること等を内容とする方式を追加する。
8 自筆証書遺言等における遺言者等の押印要件を廃止する。
二、任意後見契約に関する法律の一部を改正し、家庭裁判所は、明らかに任意後見監督人による監督の必要がないと認めるときは、任意後見監督人を選任しないことができることとするとともに、本人が補助開始の審判を受けたときに任意後見契約が終了するとの規定を削除する。
三、後見登記等に関する法律の一部を改正し、登記事項等に関する規定の整備を行う。
四、家事事件手続法の一部を改正し、家事審判手続に関する規定の整備を行う。
五、法務局における遺言書の保管等に関する法律の一部を改正し、保管証書遺言について、保管、閲覧、証明等の手続に関する規定を設ける。
六、この法律は、原則として、公布の日から起算して二年六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
以 上
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