新型コロナウイルスがが与えた労働市場への影響 その3 – 賃金の傾向(毎月勤労統計7月分 から)

新型コロナウイルスがが与えた労働市場への影響 その3 – 賃金の傾向(毎月勤労統計7月分 から)

9月上旬に、7月の休業者や失業者、また新型コロナウイルスを原因とする解雇見込みについて政府の統計データを用いてお話をしています。
そこでは、休業者数は4月の597万人をピークとし、減少傾向が続き、7月は220万人。それでも新型コロナ前と比較すればまだ30万人ほど多い状況でした。
失業率は3月から明らかに上昇基調となり、5月から7月までは2.8%から2.9%で膠着状態。この失業率水準はざっくりいえばコロナ前と比べると0.5%程度高い状況が続いていると言えます。

さて、企業が業績不振の対策として人件費削減を目指すには、人数の削減を狙うか、あるいは単価の引き下げを狙うか、という事になります。
単価 – 一人当たりの賃金の動向はどうなっているのでしょうか? この度厚生労働省より7月分の毎月勤労統計(速報値)が発表されましたので、ご紹介します。

グラフ1 賃金の動き(労働者全体)

グラフ1は、現金給与総額(名目と実質)の前年同月比の増減を示したものですが、まだまだ、前年比減ではあるが、減少の程度は5月で底を打っているように思えます。
7月は名目賃金で -1.3%、実質賃金では-1.6%という水準。

グラフ2 労働時間の動き

グラフ1の現金給与総額を押し下げている大きな原因は、グラフ2で示される普通残業や休日勤務などの所定外労働時間の動きであると考えられます。所定外労働時間は5月に大幅に落ち込み、6月7月と上昇傾向ではあるものの、7月でも前年同月比で -15.3%という動きとなっています。

同時期に発表された内閣府の景気動向指数7月分(速報)によれば、景気動向の一致指数の推移に基づく基調判断は、3か月後方移動平均に基づくため、7月も引き続き「悪化」という結果ではあるが、グラフ3(下図)が示すように一致指数は5月を底に上昇基調となっています。

グラフ3 一致指数の動き(内閣府)

これらの指標を俯瞰すると、最悪の時期はすでに脱したのかもしれません。
そうなると、民間の調査会社の8月の速報にある、「国内景気は不透明感漂う中でわずかに回復傾向」という発表も頷けるものがあります。
新型コロナウイルスの感染拡大リスクが払しょくされているとは思いませんので、景気のV型回復、今は望むべくもありません。同じ民間の調査会社の予測通り、2020年の景気はせいぜい横ばいに終わる程度だろうとは思います。底は打ったが、引き続き厳しいというのが2020年なのかもしれません。

マクロ経済がそうであっても、各企業はさらに上を目指して頑張っていただきたいと思います。各社におかれては、Withコロナをある程度は覚悟しつつも、テレワークに代表される新しい働き方を積極的に取りいれ、Withコロナがもたらす新しい生活様式が生み出す新たなを需要を貪欲に取り込んでいただきたい。
不謹慎な言い方かもしれませんが、新型コロナウイルスを“奇禍”ではなく“奇貨”として、そして、今までの効率の悪い働き方を見直し、一人一人の生産性の向上を是非とも実現してください。
コロナ不安が一掃される来年以降の飛躍に備えて欲しいと強く思います。

以 上