PMP Premium News
2020.10.09
- 労働行政の動向
兼業・副業 その1 – 労働時間の通算について –

兼業・副業(以下「兼業」)を希望する人数は増加基調にあります。政府もオープンイノベーションや起業の手段として有効であり、都市部の人材を地方で活用する地方創生にも資するとして兼業を推進しています。
新型コロナウィルスの影響による収入減を補うため、兼業をする人も増えています。
これまで企業は、社員の兼業を原則禁止としていました。残業時間も含め1日24時間を自社に捧げてもらうような働き方を是としていました。これが見直されようとしています。
これから厚生労働省発表の“兼業・副業の促進に関するガイドライン”を参考に、これを展開して兼業の制限を緩和する際に会社が留意すべき点を複数回に分け説明していきます。
まず取り上げるのは、労働時間管理の通算という問題です。労働基準法第38条には「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。」との記載があり、昭和23年(さすがの私も生まれていません)5月14日の通達基発第769号に「“事業場を異にする”とは事業主を異にする場合も含む」とあり、これを根拠として、企業に兼業先の労働時間を通算することを求めています。
労働時間を通算する際の最初の原則は、「法定労働時間を超えて残業させた企業が労基法上の義務、要は残業の支払い義務を負う」というものです。次に、一般的には後からの雇用主は他の企業で雇用されている事を確認した上で雇用契約を締結することとされているため、「通算すると法定労働時間を超える所定労働時間を雇用契約で定めることになった兼業先が、労基法上の義務、要は残業代の支払い義務を負う」ことになります。
厚労省の兼業・副業のQ&Aでは次のような事例を紹介して説明しています。自社の1日の所定労働時間が8時間である場合、兼業先で新たに1日所定労働時間4時間の雇用契約を結ぶと、兼業先での4時間の労働はすべて法定時間外労働となり、残業代の負担は兼業先となります。
自社A :所定労働時間 1日8時間
兼業先B :所定労働時間 1日4時間 ➡ 法定時間外労働 B負担
さらに次にQ&Aでは、自社が月曜から金曜まで1日8時間、週40時間の所定労働時間を定めている場合、兼業先が土曜のみ1日所定労働時間4時間の雇用契約を締結する場合は、兼業先4時間の所定労働時間はすべて法定時間外労働となると説明しています。
自社A :所定労働時間 1週40時間
兼業先B :所定労働時間 1日4時間 ➡ 法定時間外労働 B負担
厚生労働省通達 – 基発0901第3号 – によれば、「労働時間の通算は、自らの事業場における労働時間制度を基に、労働者からの申告等により把握した他の使用者の事業場における労働時間と通算することによって行うこと。」として基本的考え方をまず述べています。
例えば自社の労働時間は月初起算、月末締めだが、兼業先は毎月16日起算、翌月15日締めのように、労働時間の算定要領が異なるケースも考えられます。「週の労働時間の起算日又は月の労働時間の起算日が、自らの事業場と他の使用者の事業場とで異なる場合についても、自らの事業場の労働時間制度における起算日を基に、そこから起算した各期間における労働時間を通算する」としています。これは一安心ですね。
労働時間を通算する際、通算した2社の所定労働時間が法定労働時間に達している事を知りながら、残業=所定外労働を命ずる場合もあります。これも含めた応用編が下図となります。
ケース1は厚労省ガイドラインからの引用です。これを基に3つのパターンを展開してみました。労働時間を通算する場合、残業が自社負担となる場合(ケース3)もあるのでご注意ください。

上記のケース1からケース4については、「各々の使用者は、自らの事業場における労働時間制度を基に、他の使用者の事業場における所定労働時間・所定外労働時間についての労働者からの申告等により」
1.「まず労働契約の締結の先後の順に所定労働時間を通算し」
2.「 次に所定外労働の発生順に所定外労働時間を通算することによって」
3.「それぞれの事業場での所定労働時間・所定外労働時間を通算した労働時間を把握し、その労働時間について、自らの事業場の労働時間制度における法定労働時間を超える部分のうち、自ら労働させた時間について、時間外労働の割増賃金(法第 37 条第1項)を支払う必要があること。」という整理をしています。
ケース3では、企業は予め兼業先の所定労働時間を知り、自社の所定労働時間と通算すれば1日8時間となることも認識した上で、自社で残業を命じたことになります。
ケース4では、所定外労働の発生の順が自社、次に兼業先の順番。自社での所定労働と残業の合計時間に兼業先での所定労働時間を含めても1日8時間となりますので、自社での残業は法定時間外労働とはなりません。兼業先での残業が法定時間外労働となります。 ざっとこういう整理となります。複雑ですね。
特に、”2.「 次に所定外労働の発生順に所定外労働時間を通算することによって」″という通達から、兼業先が早朝勤務だった場合とか、自社の勤務は遅番シフトの社員が始業前にアルバイトをしたら?
通達通りの解釈では、兼業先での所定外労働が先に発生するため、自社では兼業さえしていなければ法定内残業扱いで済んだ残業代が法定外労働とみなされ、実質残業代増になる可能性もあります。
以 上
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