PMP Premium News
2020.10.12
- 労働行政の動向
兼業・副業 その2 – 労働時間の通算と36協定 –

兼業第2弾として、その1に続いて労働時間の通算について考えてみましょう。
兼業に際しての労働時間の出発点の考え方は、労働基準法第38条の定めと旧労働者通達 基発第769号(昭23.05.14)です。兼業を認める場合は企業、兼業先の労働時間を通算しなければなりません。
また先月厚生労働省は「副業・兼業の場合における労働時間管理に係る労働基準法第38条第1項の解釈等について」(基発0901第3号 令2.9.1)を発し、兼業に関する労働時間管理についての考え方を整理しています。本稿でも、この基発901第3号に基づいて、兼業の労働時間管理を考えてみたいと思います。
まず36協定をみていきましょう。36協定で定める、1日・1か月・1年間の“延長できる時間の上限”ならびに特別条項の1年についての“延長時間の上限”は、 “36 協定において定める延長時間が事業場ごとの時間で定められていることから、それぞれの事業場における時間外労働が 36 協定に定めた延長時間の範囲内であるか否かについては、自らの事業場における労働時間と他の使用者の事業場における労働時間とは通算されない(太字は筆者)”とされています。(これも 基発0901第3号を参照ください。以下についても同様にこの通達を根拠としています。)
36協定は、ご存じの通り休日労働に関する協定でもあります。休日は労働基準法第35条。兼業は労働基準法第38条。38条には休日に関する記載はありません。
結論として、兼業の場合、休日労働は通算されません。もう少し、厳密に言えば法定休日日数は通算しないという意味で、以下のように休日労働時間については通算して管理しなければならない事があります(複雑でわかり難いですね)。
筆者には素朴な疑問があります。回答には出会えていません。ご存じの通り法定休日は就業規則で定めることができます。例えば法第35条通りの“1週1日は法定休日とする”という記載でも法違反ではなく就業規則としても有効です。
注:基発第150号(昭63.3.14)は「具体的に一定の日を休日に定めるよう指導されたい」とあります。“指導されたい”と。
また休日には4週4日とする変形休日も認められています。
自社の法定休日は日曜日、兼業先は土曜日の場合もあるかもしれません。
労働時間は通算されますが、休日は通算されません。これで良いのでしょうか?
改正労基法は改正前に比べると複雑な36協定となりました。その一つが「時間外労働と休日労働の合計が単月では月100時間未満、2~6か月平均80時間以内を満たすこと」です。同じく兼業の通達を見ると、これについては「労働者個人の実労働時間に着目し、当該個人を使用する使用者を規制するものであり、その適用において自らの事業場における労働時間及び他の使用者の事業場における労働時間が通算される」とあります。同じ通達で“休日は通算されない”と断言しておきながら、36協定の“100時間+80時間規制“では、 “ 休日労働時間は時間外労働時間と同様に通算される”ことになります。
60時間超の5割増し問題です。労基法第37条第1項「当該延長して労働させた時間が一箇月について60時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の5割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。」とされています。中小企業については2023年4月までは猶予措置が適用されてはいますが、大企業ではすでに60時間超は5割増しの残業代を支給しています。これは通算されます。
同じく兼業の通達では「所定外労働の発生順によって所定外労働時間を通算して、自らの事業場の労働時間制度における法定労働時間を超える部分が1か月について 60 時間を超えた場合には、その超えた時間の労働のうち自ら労働させた時間については、5割以上の率」と明記されています。
かなり取り扱いが複雑に思えますね。
ここで、兼業の通達の以下の内容をご紹介します。他意はありませんが・・・
「労働時間の通算は、自らの事業場における労働時間と労働者からの申告等により把握した他の使用者の事業場における労働時間とを通算することによって行う」としています。続けて、「労働者からの申告等がなかった場合には労働時間の通算は要せず」と示されています。さらに「労働者からの申告等により把握した他の使用者の事業場における労働時間が事実と異なっていた場合でも労働者からの申告等により把握した労働時間によって通算していれば足りること。」としています。
法の趣旨、厚労省のガイドラインや通達を踏まえれば、ここでホッとしてはいけません。あくまでも労働時間の通算を徹底しなければなりません。とはいえ、兼業を促進しようとする国の姿勢と、昭和23年の旧労働省の“通算する”という通達を金科玉条とした(行政の立場ではせざるを得ません)上で兼業の仕組みを整えようとしている行政の努力の間には、大きなギャップが横たわっているように思えてなりません。政治の問題だと考えます。
以 上
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