PMP Premium News
2022.05.23
- 労働行政の動向
- 実務シリーズ
仕事と不妊治療の両立支援

1.背景
不妊治療については、令和3年4月より改正された次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画策定指針により、一般事業主行動計画に盛り込むことが望ましい事項として追加されています。
本年4月からは不妊治療と仕事を両立しやすい職場環境整備に取り組む優良な企業に対する新たな認定制度が創設され、次世代法に基づく「くるみん認定」等にプラスされています。
同じく本年4月からは、不妊治療に関する保険の適用範囲が拡大される等、企業に対して不妊治療と仕事の両立支援を求める環境が整いつつあると考えます。
2.不妊治療の現実
厚生労働省のハンドブックからの抜粋ですが、不妊治療の所要日数・時間はおおよそ以下の通りとのことです。
一方で、2019年データによれば60,598人が生殖補助医療により誕生、全出生児(865,239人)の7.0%を占め、これは約14.3人に1人の割合になります。
不妊を心配したことがある夫婦は夫婦全体の2.9組に1組の割合、35%相当、実際に不妊の検査や治療を受けたことがある夫婦は5.5組に1組の割合、18.2%相当になります。
実際に、不妊治療をする労働者で、「仕事との両立を考えている」割合は53%ですが、「仕事との両立ができない」との割合は 35%となっています。
もっとも、約8割の労働者は不妊治療に係る実態を理解しておらず、約7割の企業で、不妊治療を行っている従業員の把握ができていないというのが現状ですので、実際はもっと根深い問題となっているようにも思えます。(計数は何れも厚生労働省調査)
人口の減少は一国の衰退に通ずると言われています。その意味では不妊治療と仕事の両立を支援することは企業の責任であるとPMPは考えます。
3.企業の支援策とは?
不妊治療のための休暇(休職)制度を設けたり、治療費の補助などがすぐに思い浮かびますが、PMPは不妊治療を対象とする限定的な支援策の導入には実は疑問を持っています。これまでも厚生労働省は、育児休業法による子の看護休暇、介護休業法による介護休暇を企業に義務付けています。これら法定の休暇の賃金支給は任意であり、取得目的が限定されるため多くの企業が無給としていますが、ご存じの通り無給の休暇では取得のインセンティブには繋がらず、実際ほとんどの社員は、無給の看護休暇も介護休暇も取得していません。
ここで不妊治療休暇のみ有給対応などすればそれ以外の無給休暇とのバランスが崩れますし、無給休暇の対応とすれば実効性が問題となります。
PMPのお勧めは、
案1.既存の失効積み立て年休制度がある企業はその対象に不妊治療のための休暇・休職を含める。
案2.実は「案1.」よりもこちらを勧めますが、通常の有給休暇とは別枠で、1年間で失効する(次年度に繰り越ししない)有給の傷病休暇を導入する。休暇日数は年間10日または12日(毎月1日)とし、この対象に、本人の傷病、子供の看護,家族介護に加えて不妊治療も加える。
社員がそれぞれ選択できるカフェテリアプランの特別休暇バージョンです。
またこの傷病休暇制度は、欧米では多くの企業が導入済です。いわゆる年次有給休暇は旅行や家族と一緒に過ごす時間に活用し、ちょっとした病気についてはこの傷病休暇、欧米ではずばりSick Leaveと呼んでいます。
法定の休暇ではないため、半日単位や時間単位取得も活用してフレキシブルに設計する事も可能です。
案3.弾力的な就労形態の導入する。これはコロナ対応もあり、多くの企業が導入済のテレワークはその代表です。テレワークが難しい企業ではフレックスタイム制の導入も十分不妊治療と仕事の両立の支援となります。「案2.」と併せて是非ご検討ください。
最後に、今回のPMP Newsの不妊治療の現実でご紹介したデータ等は厚生労働省の「不妊治療を受けながら働き続けられる職場づくりのためのマニュアル」からの引用となります。ご興味ある方はこちらにアクセスしてください。
以 上
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