性同一性障害職員の女性用トイレ使用制限を違法とする最高裁判決

性同一性障害職員の女性用トイレ使用制限を違法とする最高裁判決

7月11日最高裁は、東京高裁の判決を破棄し、経済産業省が性同一性障害職員の女性用トイレ使用を制限することを違法としました。マスコミも大きく取り上げていますが、企業ではこれをどのように評価し、今後の参考とすべきでしょうか?

最初に結論から言えば、最高裁今崎裁判長は、「職場の組織、規模、施設の構造その他職場を取りまく環境、職種、関係する職員の人数や人間関係、当該トランスジェンダーの職場での執務状況など事情は様々であり、一律の解決策になじむものではない」としていますので、本件はあくまでも経済産業省の個別事案に対する判断であり、最高裁判決を受けて“わが社でも同様にしなければならない”というものではありません。
しかしながら、これも今崎裁判長が言う「現時点では、トランスジェンダー本人の要望・意向と他の職員の意見・反応の双方をよく聴取した上で、職場の環境維持、安全管理の観点等から最適な解決策を探っていく」という対応姿勢を人事としては基本に据えておくべきだろうと思います。

さてこの判決、今崎裁判長も含む裁判官全員が補足意見を付すという珍しいものでした。これらも引用の上で、本件をPMPなりに整理しておきたいと思います。

PMPが注目した補足コメントをご紹介しましょう。一部の“切り取り”になってしまうので各裁判官の趣旨がそのままお伝えできるかが心配ですので、裁判官名もつけず、本最高裁の裁判官の補足意見の一部としてご紹介します。また太字PMPによるものです

・本件についてみれば、経済産業省は本件説明会において女性職員が違和感を抱いているように「見えた」ことを理由として、本件処遇(女性トイレ利用の制限の事 – PMP)を決定し、その後も、上告人が性別適合手術を受けず、戸籍上の記載が男性であることを理由にこれを見直すことなく約4年10か月にわたり本件処遇を維持してきたものであり、このような経済産業省の対応が合理性を欠くことは明らかであり、また、上告人に対してのみ一方的な制約を課すものとして公平性を欠くものといわざるを得ない。(略)(経済産業省は)施設管理者等として女性職員らの理解を得るための努力を行い、漸次その禁止を軽減・解除するなどの方法も十分にあり得たし、また、行うべきであった。

・本件の事実関係の下では(略)上告人が(略)トランスジェンダーで戸籍上はなお男性であることを認識している女性職員が抱くかもしれない違和感羞恥心等を過大に評価し、上告人が自己の性自認に基づくトイレを他の女性職員と同じ条件で使用する利益を過少に評価しており、裁量権の逸脱があり違法として取消しを免れない

・経済産業省としては、職員間の利益の調整を図ろうとして、本件処遇を導入したものと認められるところではあるが、トイレの使用への制約という面からすると、不利益を被ったのは上告人のみであったことから、調整の在り方としては、本件処遇は、均衡が取れていなかった

最後に、今崎裁判長のこのコメントで、本稿は締めくくります。
「人事は、トランスジェンダーの置かれた立場に十分に配慮し、真摯に調整を尽くすべき責務があるという点は忘れてはならない。」

以    上