フリーランスを労災保険の特別加入制度への適用拡大に

フリーランスを労災保険の特別加入制度への適用拡大に

2021年から、労災保険の特別加入制度を活用して、労働者に準じて労災の保護をするに適当な者に対して任意加入を認める動きが始まりました。
これまでの動きを振り返りましょう。

(1)2021年3年4月1日
・ 芸能従事者 放送番組(広告放送を含む。)、映画、劇場、イベント会場、楽屋等において演技、舞踊、音楽、演芸その他の芸能実演や演出の提供、若しくは芸能製作に従事する者
・ アニメーション制作従事者
・ 柔道整復師 等

(2)2021年9月1日
・ 自転車配達員(Uber Eats ですね)   2021年9月10日 PMP News をご参照ください。
・ ITフリーランス

(3)2022年4月1日
・ あん摩マッサージ指圧師、はり師又はきゅう師

(4)令2022年7月1日
・ 歯科技工士

今年6月16日の閣議決定「成長戦略等のフォローアップ」でも、労災保険特別加入制度の対象に一定の要件を満たすフリーランスを追加することについて、労働政策審議会で審議を行い、早期に結論を得て、所要の措置を講ずると決定され、これを受けて、今月4日、厚生労働省内の労災保険部会では、以下のような整理が行われました。

  1. フリーランス法における特定受託事業者が業務委託事業者から業務委託を受けて行う事業を労災保険の特別加入の対象とすることについてどう考えるか?仮に、特定受託業務を新たに特別加入の対象とする場合、ITフリーランスなど既に特別加入の対象となっている業務との関係をどのように考える?。
  • 特別加入の業務については、そもそも特別加入制度創設時の労働者災害補償保険審議会(昭和40年10月20日)の答申において、「特別加入については、業務の実態、災害の発生状況等から、労働基準法の適用労働者に準じて保護すべき者に対し、特例として労災保険の適用を及ぼすのが制度の趣旨である・・・特別加入者の従事する業務の範囲が明確性ないし特定性をもち保険業務の技術的な処理の適確を期しうるかどうかを十分に検討すべきであり・・・」とされ、また労働政策審議会建議(令和元年12月23日第83回労災保険部会)において「・・・社会経済情勢の変化も踏まえ、特別加入の対象範囲や運用方法等について、適切かつ現代に合った制度運用となるよう見直しを行う必要がある。」とされている。
  • 「フリーランス実態調査結果」によれば、フリーランスとして営業や講師、調査・研究等に従事する者が一定数見込まれ、当該者は労働者と同様の業務を行っていること、また当該業務に係る労働者との危険性に差がないことが想定される。
  • また、特定受託業務について、業務の内容は広範にわたるものの、その業務の内容はフリーランス法の規定に基づき、特定受託事業者が業務委託事業者から業務委託を受けて行う物品の製造、情報成果物の作成又は役務の提供に限られ、また当該業務委託に係る業務の内容等については、フリーランス法に基づき書面等により明示されることが義務付けられることとなる。
  • なお、今回の業務の追加により、既存の特別加入に係る業務と特定受託業務のいずれにも該当する場合も想定されるが、その場合、同一の業務について異なる料率が設定され、災害率や就業形態ごとに料率を設定する趣旨に反することも想定されるほか、いずれに加入するかを就業者が選択できることとすると、料率の低い業務に特別加入者が流れてしまうことも考えられる。
  1. 特定受託業務の保険料率をどのように設定するか?
  • フリーランスは広範な業務が想定されるが、「フリーランス実態調査結果」によれば、既存の特別加入に含まれる可能性が高いと思われる事業又は作業を除くと、営業、講師・インストラクター、その他(専門業務関連)、デザイン制作・コンテンツ制作、調査・研究・コンサルティング、その他(生活関連サービス)、データ入力・文書入力等、ライティング・記事等執筆業務が主に想定される。
  • 今回の特定受託業務に該当することが想定される業務に類似する既存の事業の種類は、その多くが「94その他の各種事業」に該当し、その料率は3/1000となっている。

3.特別加入団体の在り方?

  • これまで、特別加入の対象となる業務は、各種の業界団体の要望等を踏まえてその範囲を拡大してきたところであり、特別加入団体は、基本的には各地域の既存の業界団体の発意に基づき事務運営を行うこととしてきた。
  • また、特別加入団体については、近隣の都道府県のブロック内で事務処理を行うことを基本として、これに必要な事務処理能力や経理的基礎があることを要件としている。一方、労災保険の特別加入制度の拡大とあわせて、2021年4月より、近隣の都道府県の区域を超えるブロックにおいて、災害防止等に関する研修会等を実施する場合には、 当該ブロックを超えて事務処理を行うことを認めている。
  • 今回の特定受託業務については、フリーランス法の附帯決議において「希望するすべての特定受託事業者が加入できるよう対象範囲を拡大する」こととされており、また特定受託事業者が行う業務は広範にわたることとなる。
  • このため、今回の特定受託業務に係る特別加入団体に関しては、全国各地において丁寧なフリーランス保護のための支援を行うとともに、全国各地のフリーランスに対し、災害防止のための措置を適切に講じる必要がある。

4.災害防止措置の内容?

  • これまでの既存業種の特別加入とは異なり、作業の態様が様々なフリーランスの特別加入者への災害防止措置の内容をどのようなものとするかが課題となる。
  • フリーランスの個々の業態・業種に着目して、災害防止教育のカリキュラムを設定することは難しいことから、VDT作業やメンタルヘルス、交通災害防止、転倒災害防止など、様々な業務に共通的な災害防止教育の内容をパッケージ化して、加入者教育を実施すること等が考えられる。

以    上