改正育児介護休業法 その#9 雇用環境の整備義務等 – 来年4月からの改正法関連 2/2

改正育児介護休業法 その#9 雇用環境の整備義務等 – 来年4月からの改正法関連 2/2

改正育児休業法で来年4月から施行開始となる箇所の解説の2回目となります。

まず雇用環境の整備義務について説明します。
前号でご説明した妊娠・出産の申し出をした労働者に対する育児休業の個別周知・意向確認を行う前提条件という位置づけであると考えています。

言うまでもなく、育児休業法改正の目的は育児休業の取得促進です。各社人事はこの目的の実現に最も効率的に結びつく雇用環境整備策を採用するべきであろうと思います。

既に過去のPMP News でもお知らせ済の情報も含めて、4月から備えるべき雇用環境の整備は以下の何れかの措置となります。厚生労働省は、可能な限り、複数の措置を行うことが望ましいとしています。

措置① 育児休業・産後パパ育休に関する研修の実施
措置② 育児休業・産後パパ育休に関する相談体制の整備等(相談窓口設置)
措置③ 自社の労働者の育児休業・産後パパ育休取得事例の収集・提供
措置④ 自社の労働者へ育児休業・産後パパ育休制度と育児休業取得促進に関する方針の周知

それぞれの措置に関する厚生労働省見解と、これに対するPMPコメントをご紹介します。
① 「研修」は、全労働者を対象とすることが望ましいとするも少なくとも管理職については、研修を受けたことがある状態にすることが必要。

PMP:管理職について”研修を受けた事がある状態にする”とは? 通常、毎年新しい管理職昇格があるとすれば、管理職対象研修は少なくとも毎年実施の必要があるように思えます。
なお、ご親切にも厚労省では、研修に活用できる動画『知っておきたい育児・介護休業法』を作成しています。参考にしてください。

 ② 「相談体制の整備」は、相談体制の窓口の設置や相談対応者を置き、これを周知することを意味する。窓口を形式的に設けるだけでは当然NGとなり、実質的な対応が可能な窓口が設けられていることが必要。労働者への周知等により、労働者が利用しやすい体制を整備。

③ 「自社の育休取得の事例提供」は、自社の育児休業の取得事例を収集し、当該事例の掲載された書類の配付やイントラネットへの掲載等を行い、労働者の閲覧に供することを言う。提供する取得事例を特定の性別や職種、雇用形態等に偏らせず、可能な限り様々な労働者の事例を収集・提供することにより、特定の者の育児休業の申出を控えさせることに繋がらないように配慮することも必要。

④ 「制度と育休取得促進に関する方針の周知」は、育児休業に関する制度及び育児休業の取得の促進に関する事業主の方針を記載したものを、事業所内やイントラネットへ掲示することを意味します。
なお、掲記③ 「自社の育休取得の事例提供」④ 「制度と育休取得促進に関する方針の周知」についても厚生労働省から参考事例がWORDで紹介されています。
※ 『育児休業取得事例記載例』  『休業制度及び取得促進方針周知例』 ←こちらからwordファイルをダウンロードできます。

関連する Q&A も発表されました。
PMPの関心を惹いたものは以下となります。

Q:育児期の社員がおらず、また、採用する予定もない場合でも、雇用環境整備をするのか?
A:養子縁組等などを考えれば、幅広い年齢の労働者が育児休業申出を行う可能性があり、雇用環境の整備義務の対象は全ての事業主となる。        

さて雇用環境整備の措置義務を総括すれば、PMPでは人事の作業量だけを考えれば以下が一つのやり方であるように思います。
措置義務としては、掲記②の相談窓口の設置を選択する。
厚生労働省が推奨する複数の選択肢をとる場合は、掲記④制度と育休取得促進に関する方針の周知を加える。その場合、厚労省の標準形をたたき台として活用する。残りの2つの選択肢については、措置義務としては選択せず、一方で自社の育児休業促進のための必要と判断する場合に、適宜研修や社内情報の収集とフイ―ドバックを課活用する、要はこれらの選択肢については、措置義務として選択する場合に派生する追加作業の負担は排除しておく。
このようなやり方で宜しいかと思います。
特に管理職研修については、育児休業のみの研修ではなく、ハラスメントや労働時間管理、過重労働対応などを広く網羅した管理職向け労働法研修として整理すべきであろうと考えます。
        
次に、有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和について。
既にご案内の通り、有期雇用労働者の育児・介護休業(育児休業給付、介護休業給付についても同様)の取得要件のうちの、「引き続き雇用された期間が1年以上」が来年4月から撤廃されます。正社員等無期雇用労働者と法的には同じ扱いとなります。
しかしながら、これもご案内の通り、正社員と同様、この緩和された要件は労使協定の締結により除外することができます。
PMPが観察したところ、多くの企業では、正社員入社1年未満の育児休業等に関する労使協定を締結されています。労使協定の文言だけを見れば、この法改正後も、何の変更も必要のないものだとは思いますが、労使協定の締結日(発効日)は少なくとも改正法施行の来年4月1日以降とする必要があります。

厚労省もQ&A(Q4-3)にて「改正法の施行後において、有期雇用労働者も含めて、引き続き雇用されていた期間が1年未満の労働者について、法第6条第 1 項ただし書に基づき当該申出を拒む場合は、そのことについて、改めて労使協定を締結していただく必要がある」と回答しています。

以    上