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2026.10.16

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カスハラ対応:ハラスメント防止規定の役割と企業内で「顧客」の役割を担う担当者への注意喚起 – 今回のカスハラと求職者等セクハラの問題提起 その2

2026年10月1日からカスタマーハラスメント(以下「カスハラ」)と求職者等に対するセクシャルハラスメントの防止措置が企業に義務付けられました。
この法改正を受けて、企業からはハラスメント防止規定の新設や既存規定の改正について、PMPにも数多くのお問い合わせをいただいています。厚生労働省からは、今年7月に改正法への対応を踏まえたハラスメント防止規定例が示されていますが、その規定としての完成度については疑問があり、PMP Premium News でもすでに指摘したところです。
そもそも、今回の法改正は、企業にカスハラ防止規定や求職者等セクハラ防止規定の作成を一律に義務付けるものではありません。それにもかかわらず、規定の新設・改正に関する相談が多いのは、企業が新たな法的義務への対応として、まず社内規定の整備を考えるからでしょう。もちろん、規定の整備自体に意味がないわけではありません。しかし、今回の二つのハラスメントについては、従来の社内ハラスメントとは異なる特徴があり、規定の新設や改正だけで企業の義務を果たせるわけではないことに注意が必要です。

社内規定だけでは対応が完結しない理由
従来のセクハラやパワハラは、基本的には同じ企業に勤務する社員間で発生することが多い問題でした。企業は就業規則やハラスメント防止規定により行為を禁止し、必要に応じて懲戒処分を行うことができます。
しかし、今回のカスハラでは、行為者は原則として顧客や取引先などの社外の関係者です。また、求職者等セクハラでは、被害を受けるのは採用応募者やインターンシップ参加者など、企業との雇用関係にない人たちです。
社内規定によって自社社員の行動を規律することはできても、顧客や取引先の社員に自社の服務規律を適用したり、これに基づいて処分したりすることはできません。求職者等セクハラについても、自社の採用担当者などを規律するだけでなく、社外の求職者等が安心して相談できる窓口や、相談を受けた場合の対応体制を整える必要があります。
今回の法改正が企業に求めているのは、あくまでハラスメントを防止し、発生した場合に適切に対応できる仕組みを整えることです。規定を整備することは、その仕組みづくりの一部分にすぎません。

自社の社員がカスハラの行為者になることもある
一方で、カスハラ対策については、もう一つ注意したい点があります。カスハラというと、小売店や飲食店などで顧客から暴言や理不尽な要求を受ける社員を想像しがちです。しかし、法律上の「顧客等」には、企業間取引の相手方も含まれます。
B to B
の企業であっても、自社の社員が取引先に対して顧客の立場になる場面は数多くあります。例えば、資材や部品の購入を担当する購買部門、外部のシステム会社や業務委託先を管理する部門、物流会社や各種サービス提供会社に業務を依頼する担当者などです。
こうした担当者が、取引先の社員に対して過度な要求を繰り返したり、威圧的な態度で対応を迫ったりすれば、相手方の企業においてカスハラの問題となる可能性があります。企業にとっては、自社の社員がカスハラの被害者となることへの対策だけでなく、自社の社員をカスハラの行為者にしないための対策も必要なのです。
厚生労働省のカスハラ防止指針でも、企業は、自社の社員が他社の社員に対してカスハラを行ってはならない旨の方針を示すことが望ましいとされています。

服務規律に新たな禁止規定は必要か
では、そのために就業規則を改正する必要があるのでしょうか。一般的な就業規則の服務規律には、既に、法令を遵守すること、会社の信用や名誉を損なわないこと、業務上の立場を不当に利用しないこと、他人に対して不適切な言動を行わないことなどが定められています。
こうした既存の規定によっても、取引先の社員に対する暴言や威圧的な言動、不当な要求などのカスハラ行為を服務規律違反として扱える場合は少なくないでしょう。
今回のカスハラ対策の義務化によって、直ちに就業規則に新たな懲戒事由を追加しなければならないとは思いません。
ただし、既存の服務規律によって対応できることと、社員が取引先に対するカスハラの禁止を十分に認識していることは別の問題です。社員の中には、顧客として取引先に強く要求することは当然の業務行為であり、カスハラとは無関係だと考えている人もいるかもしれません。PMPとしては、今回の法改正を契機に、取引先その他社外の関係者に対するカスハラを禁止する旨を服務規律に明記することをお勧めします。
単に懲戒処分の根拠を確保するためではなく、自社が顧客の立場にある場合にも相手方の社員の就業環境を尊重しなければならないことを、社内に明確に示すという観点も考えれば、これを契機として従来のハラスメント防止規定の見直しもPMPとしてはお勧めします。
  注:PMPでは従来の「ハラスメント防止規定」PMP標準形を今回の法改正に沿った改訂版を作成しています。ご関心ある方はPMPまでお問い合わせください。

他社からカスハラ調査への協力を求められたら
さらに、今回のカスハラ防止指針には、これまでのハラスメント対策とは異なる重要な規定があります。
自社の社員が他社の社員に対してカスハラを行った疑いがあり、相手方の企業から事実関係の確認などへの協力を求められた場合には、協力するよう努めなければならないとされています。例えば、取引先から「貴社の購買担当者の言動について、当社社員からカスハラの相談があったため、事実関係の確認に協力してほしい」と申し入れられるケースです。この場合、相手方企業の社員は自社の社員ではありません。しかし、その言動を行ったとされる者は自社の社員ですから、企業として事実確認に協力し、必要な対応を検討する立場になります。
また、指針では、こうした事実確認に協力した社員に対し、不利益な取扱いを行わない旨を定め、周知することが望ましいとされています。
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としては、この点についても服務規律に、他の事業主からカスハラの事実確認等への協力を求められた場合には、社員は会社が行う必要かつ合理的な調査に誠実に協力する旨を加えることをお勧めします。
もっとも、調査への協力を求められたからといって、カスハラがあったことが確定するわけではありません。会社は関係者の説明や客観的な資料を踏まえ、公平に事実関係を確認する必要があります。
また、調査への協力と、相手方企業への無制限な情報提供とは異なります。個人情報や営業上の秘密などの取扱いにも注意が必要です。

カスハラ対策は企業の内側と外側の双方に目を向けたい
今回のカスハラ対策について、多くの企業は、顧客から不当な言動を受けた社員をどのように守るかという視点から準備を進めていることでしょう。
当然必要な対応です。
併せて忘れてはならないのは、自社の社員も、取引先から見れば顧客となることがあるという点です。自社社員の言動が相手方企業におけるカスハラ問題を引き起こす可能性もあります。
企業には今回を契機としてハラスメント防止規定を整備し、被害者となった自社社員を守る仕組みだけでなく、他社社員に対するカスハラの禁止や、他社からの事実確認への協力についても、ぜひ検討していただきたいと思います。

以    上

シリーズ記事(全3回)>
カスハラ対応:顧客の権利は? – 今回のカスハラと求職者等セクハラの問題提起 その1

関連記事>
10月1日からのカスハラ・求職者等セクハラを含んだハラスメント防止規定(簡易版)
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10月1日からのカスハラ+求者等へのセクハラ関連 その1 – 4月24日、厚生労働省がリーフレットを作成しました。

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