PMP Premium News
2021.10.15
- 労働行政の動向
- 実務シリーズ
新型コロナウイルス、労災対応について

緊急事態宣言も明け、新型コロナウイルス感染者数も激減している昨今です。
とは言え、感染者数が短期間に激減した要因分析は未だなされず、そのため、第6波に対する警戒も当面は緩めてはならないという不安定な環境下にあります。
コロナ関連、高い労災認定率に注目
このタイミングでコロナ関連の労災実績件数を調べてみました。
下表は2021年9月24日現在(正確には18時時点)の新型コロナウイルスの労災の請求・決定、並びに支給済件数です。コロナの影響が最も深刻な医療従事者と医療従事者以外、これに海外出張者の3つの分類で厚生労働省は件数を取り纏めています。
ここで注目いただきたいのは、PMPが試算し下表に追加した決定割合(=決定件数÷請求件数)です。参考までに、昨年度令和2年度の過労死関連の労災の請求件数と決定件数を追記しています。過労死のケースでは労災決定割合は28.3%、対して新型コロナ関連は合計で、79.5%、医療従事者以外だけを見ても66.8%と請求の3分の2の労災が認められるという高い決定割合となっています。

新型コロナウイルスは新しい感染症であり、感染経路不明の発生者が多かったことはご記憶に残っていると思います。これに対して、労災窓口ではかなり弾力的な取り扱いであると聞いていますが、これが統計にも表れているように思います。
コロナと労災との関係は過去PMP News Letterでも触れています。(PMP HP ⇒ PMPニュースの2020年5月1日号、7月10日号、8月25日号 をそれぞれご参照ください)
7月10日号では「(感染した社員の)感染経路は特定されないが、従事した業務は、顧客との近接や接触が多い労働環境下での業務と認められ、業務により感染した蓋然性が高く、業務に起因したものと判断されることから、(労災保険が)支給決定された。」と具体事例の紹介もしていました。
労災は保険です。掲記の労災認定実績を踏まえれば、各社ともコロナ感染の事例の際には、労災の活用についても検討することを勧めるものです。
後遺症と労災についても考えてみました
さらに、後遺症の問題。厚生労働省でも今年7月にコロナ後遺症についての調査に着手しました。とは言え、海外にまで視野を広げてもコロナ後遺症についてはまだ全貌がはっきりとはしていないようです。
しかしながら、後遺症は深刻な問題であるように思えます。
例えば、日本。厚生労働省からは、2020年1月~2021年2月にPCR検査または抗原検査で陽性と判定され、医療機関へ入院した522人を調査したところ、入院時に「疲労感・倦怠感」「息苦しさ」「筋力低下」「睡眠障害」「思考力・集中力低下」「脱毛」の症状があった人の3割以上は「半年後も症状がなくならない」との結果であったとの発表がありました。
回復後に出現する遅発性後遺症はウイルス後疲労症候群と呼ばれ、脱毛、記憶障害、睡眠障害、集中力低下などがあるとも言われています。
ノルウェーからは「感染したが入院するほどではなかった16歳から30歳までの若年層のなかに、感染から6カ月が経過しても後遺症が続く場合があることが明らかになった。症状としては、長引く呼吸困難(息切れ)や、味覚障害、嗅覚障害、倦怠感、集中力の低下、記憶障害などがある。」という研究結果が報道されていました。
アメリカからは感染者195万9982人の後遺症の解析結果として「後遺症の発生頻度は症状が重かった人ほど高く、入院した感染者では約50%、入院の必要がない有症状の感染者では27%だった。一方、無症状の感染者でも19%に後遺症が発生していた。」との報告がありました。アメリカではワクチン接種の開始される前は、WHOの“TEST!TEST!TEST”のメッセージではないでしょうが、全米至る所にPCR検査センターが設置され盛んにPCR検査が行われていました。その結果、PCR検査件数自体が大幅に少ない日本では容易に見過ごされがちな無症状者もアメリカではPCR検査を通じて数多く感染者として把握されていたようです。その上で無症状感染者の約2割にコロナ後遺症が観察されたという事になります。日本ではどうなのでしょうか? 無症状感染、PCR検査も行われず、コロナと認識されないまま回復し、今、後遺症で悩んでいる人などはいないのでしょうか?
コロナ後遺症については、まだまだこれからの研究を待たないと分からない事が多いようですが、企業としては、コロナ後遺症までも想定した上で社員の健康管理責任を検討する必要はありませんか? 一度、衛生委員会や産業医を活用して議論していただきたいと思います。万一の場合は躊躇せず労災対応も視野に入れてください。
以 上
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